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結核病棟
中学3年生の夏の話。
神戸に住んでいた俺は、通っていた塾の毎年の行事で兵庫県の北側にある豊岡と言う街の海岸にキャンプに行った。
男女合わせて20人ぐらいで行ったと思う。
その中には好きな女の子もいたので「何かを期待して」ドキドキして行ったことを覚えている。
結局期待した「何か」は無かったが。
姫路まで山陽本線で行き、播但線に乗り換えた俺たちは無事豊岡に着いた。
昼間は波の高い日本海で泳いだり、船に乗って魚釣りをしたりして適当に遊んだ。
いつも泳いでいた瀬戸内海よりも水の透明度が高いなと思った。
その時に引率で来た塾の先生がご多分にもれず「お前ら、夜は肝試しに行くから覚悟しとくように」と言ってきた。
キャンプのお約束事だ。
仕方ない。
俺たちは晩飯のカレーを食って、浜辺で花火をした後に肝試しに行く用意をした。
先生に聞くと、その目的地は街はずれに戦前に建てられた結核患者を隔離していた病棟だと言う。
当時の結核は「不治の病」とされていて有効な治療方法もなく、伝染を恐れて村人から隔離して担当の人間が食事を運ぶだけと言ういわゆる「ほったらかしの状態」であったと言う。
いわゆる「放置プレー」だ。
当然ほったらかしなので、かなりの患者が退院することなく亡くなったらしい。
夜の10時ごろ、先生が運転する俺たちを乗せたマイクロバスはその廃墟に着いた。
当然もうその施設は誰も住んでいないし、使われてもいないので荒れるに任せてボロボロの廃墟であった。
俺たち20人の男女は「キヤーキヤー」言いながら不気味な病棟を懐中電灯を持って回った。
結論から言えば、その時に何か幽霊を見たとか変な物音を聞いたような話はなく、俺たちは半分がっかりした感じで写真だけ撮って帰った。
※
キャンプが終わり神戸に帰った俺たちは1週間後に、吉川さんと言う女の子が「塾の帰りにウチに来て欲しい」と言われた。
理由は、カメラで撮影したすべての写真に「なんか紫の玉が写っていると」言った。
興味津々で、彼女の家に行く俺たち。
彼女から写真の束を受け取って順番に見ていくと、病棟の中のすべての写真の奥のほうに紫色の玉がはっきり写っていた。
当時は「オーブ」という表現方法はまだなかっ。
「なんやこれ？」
「気持ち悪ー」
玉は大きさ的には野球ボール位の大きさだったと思う。
そいつが随所に漂う。
必ず写真一枚につき一つ。
1枚だけ写っていたのであれば、「何かの映り込みかな？」と思うのであるが、すべての写真にそれが写っていた。
まるで肝試しをしている俺たちを見つめるように。
やはり「この世の中にはこういう世界があるのだなぁ」と感じた出来事であった。
その後「誰かが死んだとか怪我をした」などの落ちは一切無し。
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