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夜中に泣く木彫り人形
高校2年生の夏休みの時の話。
同じクラスで、仲良くしていたグループがあった。
男3人、女3人のグループである。
こいつらとは何十年経った今も付き合いがある。
夏休み、俺たちの男グループは3人で四国方面に遊びに行った。
さびしい野郎三人旅だ。
女グループの3人は長野県白樺湖に遊びに行ったらしい。
2学期になって「お互い行った所のお土産を交換しようぜ」と言う約束のもとに各自のお土産を学校に持ってきて交換をした。
俺達は宇和島の闘牛の人形とペナントを奴らにプレゼントした。
ペナントってわかるかな?
三角形をした旗のようなやつで、昭和当時はどこの家庭でも壁に貼ってあったシロモノだ。
彼女たちは長野県で買ったと言う、小さな白樺の木に彫った円筒形の小さな人形をプレゼントしてくれた。
真っ白な木に吊り上がった大きな赤い目が印象的だった。
イメージとしてはインディアンのトーテムポールを小さく、短くしたような感じだ。
あまり高校生のみやげとしてはセンスがない。
それを家に持って帰った俺は、ガラス戸のある本棚の1番上に飾っていた。
夜間、勉強していた俺はいきなり「カリカリ」と言う音が聞こえてきたので「ゴキブリが入ってきたのかな」と思った。
実際、俺の本棚の後ろにはよくゴキブリがいたから似たような音がするのである。
コックローチを構えて戦闘態勢に入り、ゴキブリを探していると「その音」は本棚の1番上から聞こえてきた。
「なるほど、やつは上に逃げたのか」と思ったがよく聞くとその音はガラス戸の内側から聞こえる。
そこにまでゴキブリが入ることがあんまりなかったので「少しおかしいな?」と言う気がした。
そしてガラス戸を開けると「カリカリ」と言う音がさっきより大きく聞こえてきた。
やはり音源は中である。
確信した。
音の犯人を探すべくあちこち探し回ったが、目の前にある今日もらってきた白樺の人形がどうやら犯人のようである。
俺は最初、「白樺の木の中に虫でも入ってるのかな」と思い、ひっくり返して虫の入りそうな穴を探したがそんなものもない。
試しに思いっきり人形を振ってみたが、虫も出てこなかった。
ただ、このような動作をやってる間は「カリカリ」と言う音がしなかった。
「まぁ、気のせいだろう」と思ってもう一度ガラス戸を閉めて勉強に集中した。
「気のせい」にするのが一番便利だし無難だ。
そうたら、しばらく経ってまたもや同じ音が聞こえてくる。
「カリカリ」
進化して音は
「カッカッカッカッ」
になった。
思い立った俺は、この音をテープに録音した。
そして次の朝そのテープを学校に持っていき、この人形をプレゼントしてくれた女の子たちに「お前ら、この人形やばいとこで買ったんとちゃうんか?」と尋ねた。
そしたら「なんで?」と聞くのでさっきの話をしてやって、なおかつテープを回した。
「な、変な音してるやろ。カリカリ言って」
「ほんとだねぇ」
「不思議だなぁ」
とか勝手なこと言ってる。
お前たちのみやげだ。
で、この話が結構クラス内で広まってしまい、その日から「人形そのものとテープを一緒に貸してくれ」と言うリクエストが相次いだ。
気前のいい俺は、全員に貸してあげた。
貸したクラスの全員が「カリカリ」の音を聞いたそうだ。
1週間ほどして俺は人形の解体を決意した。
やばい奴なら「呪い」とかあると本で読んだから焼く決心をした。
「おい、例の人形、今誰が借りてるんだ?」
と聞くと
「誰も借りてない」
との返事。
「え?」
結論から言うと、人形も録音したテープもどこかに行ってしまって無くなってしまったのである。
これも落ちなし
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