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第3話
翌週、休みの日に星莉をデートに誘い出かけることになった。星莉には何度も断られたのだが、会いたいと口にしたらどうにか会ってくれたのだ。
「……星莉!」
待ち合わせの場所で待っていると、前方から星莉が歩いて来た。白と青のストライプ柄のワンピースを着ていて、前に星莉がお気に入りと言っていた服だということに気がつく。
「あ、海斗くん……お待たせ」
星莉はそう言って笑ったが、すぐに浮かない顔に戻ってしまった。最近、こういう表情を浮かべていることが多い。
――やはり、僕と会うのは嫌だったのだろうか。
弱気な考えが首をもたげる。だが、どうにかその思考を振り払い、星莉と楽しく過ごせるように務めて明るく振舞う。
前々から星莉が行きたいと言っていた映画を見に行ったり、予定がズレて行けなくなってしまっていた場所へ行ってみたり。色々なことをしているうちに時間はあっという間に過ぎ、気づけば日は暮れ始めていた。
「……もう、こんな時間」
星莉は薄雲の広がる、薄めたピーチティーのような色をしている空を見て小さく呟いた。
「暗くならないうちに帰ろうか」
そう提案すると星莉は僕の袖を引いて、引き止めた。
「ま、待って。あのね、私……今日は海斗くんに話したいことがあって来たの」
神妙な顔つきで、意を決して話すと言ったその様子に僕は心臓が早くなるのを感じながらも、それを悟られないように繕って星莉に先を促す。
「わ、私……海斗くんと、別れたいの」
一番、言われたくなかったその言葉に……僕は胸の辺りを重たい鈍器で殴られた時見たく、声が出なかった。
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