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第4話
「ど、どうして?」
ようやく絞り出せた台詞は短いその一言だけだった。星莉は苦しそうに顔を歪め、目を伏せてぽつりぽつりと囁くように言葉を零す。
「貴方といると、辛いの……」
「それは、僕のせい?」
「違うの、海斗くんは悪くないよ。ただ……」
「ただ?」
「どうしたらいいのか分からないの」
星莉は細く、白いその手で涙を拭うように目元に手を当てる。両手に阻まれて星莉の顔は見えないがきっと泣いているのだろう。
そのまま、嗚咽混じりに星莉は呟いた。
「貴方が、好きすぎて……辛いの……」
僕は肩を震わせている星莉を引き寄せ、抱き締めた。一瞬、身体を強ばらせた星莉だったが振り払うことはせず、ただされるがままになっている。
「優しくしないでよ……。また、離れられなくなっちゃうじゃない……」
「離れないでよ。ずっと側にいてよ」
「そういう所が、嫌いなの……。いつもそうやって、私を溺れさせるじゃない……」
それっきり、星莉は何も話さなかった。ただ啜り泣く声だけが聞こえていた。
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