第4話

1/1
前へ
/7ページ
次へ

第4話

「ど、どうして?」  ようやく絞り出せた台詞は短いその一言だけだった。星莉は苦しそうに顔を歪め、目を伏せてぽつりぽつりと囁くように言葉を零す。 「貴方といると、辛いの……」 「それは、僕のせい?」 「違うの、海斗くんは悪くないよ。ただ……」 「ただ?」 「どうしたらいいのか分からないの」  星莉は細く、白いその手で涙を拭うように目元に手を当てる。両手に阻まれて星莉の顔は見えないがきっと泣いているのだろう。  そのまま、嗚咽混じりに星莉は呟いた。 「貴方が、好きすぎて……辛いの……」  僕は肩を震わせている星莉を引き寄せ、抱き締めた。一瞬、身体を強ばらせた星莉だったが振り払うことはせず、ただされるがままになっている。 「優しくしないでよ……。また、離れられなくなっちゃうじゃない……」 「離れないでよ。ずっと側にいてよ」 「そういう所が、嫌いなの……。いつもそうやって、私を溺れさせるじゃない……」  それっきり、星莉は何も話さなかった。ただ啜り泣く声だけが聞こえていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加