同窓会

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「はい!!質問!!先生の彼女いくつですかー?」 「教えねえよ。」 「彼女とどこで知り合ったんですかー?」 「さぁな。」 「はーい!彼女のどこが好きなのー?」 「、、、知るかよ。」 「伊藤、どこでデートしてんのー?」 「言わねぇよ。」 次々に生徒たちから、質問が飛んでくる。 教師の色恋沙汰がそんなに楽しいのか? 、、、ったく、おまえたちの気が知れないよ。 適当に受け流しているのに、なぜかヒートアップする生徒達。 「先生!はーい!質問ー!彼女可愛い?美人??」 「知らねぇよ。」 なんで、そんな事をおまえらに言わなきゃならねぇんだよ。 くだらない質問を適当に交わしていると、隣で仕切っていた川合が、突然怒鳴り出した。 「おい!ちゃんと答えろよ!面白くねぇだろ!」 、、、ああ、そうだよ、面白くねえよ。 これの何が楽しいんだよ、、、。 「ちゃんと答えろよ!約束しただろーが!!」 酔っ払いの川合を横目にして、酒の勢いというのは、本当に恐ろしいものだとつくづく感じる。 、、、ったく、めんどくせえな。 確かに、収束つくどころか、みんな面白がって、盛り上がってしまっている。 俺も振り回されて、疲れてきている。 とにかく、早く終わりたいところだ。 「わかったよ。最後だぞ。それ答えてやるよ。それで、この話は終わりだ!いいな!」 教え子たちに聞こえるように、大きな声で、最後だと念を押す。 「ちっ!つまんねぇな!まーいーや。誰か最後に質問したい奴いるー??」 川合も、どうやら諦めがついたようで、みんなに声をかけた。 そんな中、1人の男子が手を上げる。 「はーい!!先生ー!質問したい!!」 「なんだよ。早くしろよ。」 もう早く終わりにしたい。 早く解放してくれ、、、。 そう思っていると、その生徒は、核心を突く質問をぶち込んできた。 「先生、その彼女と結婚するのー?」 男子生徒の質問に、場がシーンとなる。 ったく、、。 その質問が来るとはな、、、。 わかったよ。 仕方ねぇな。 まぁ、最後だと言った手前もある。 そんなに知りたいなら答えてやるよ。 「するよ。」 俺がそう答えると、キャーっという奇声にも近い女子の声が溢れ出た。 何だよ。 ったく、うるせえな。 そんな騒ぐ事か?? 男子も、女子につられるようにして、おおーっという声が響き渡る。 、、、ったく、おまえら、何なんだよ、、、。 今日は俺のプライベートを晒す会じゃねぇだろ。 川合も、周囲の盛り上がりに満足げな様子で、 俺を見てニヤつきながら、意味ありげに呟く。 「結婚するんだー、へぇー。」 、、、、。 めんどくせぇ、、、。 どーせ、俺の本心を探りたいんだろ。 おまえの魂胆は見え見えなんだよ。 そんなに知りたいなら教えてやるよ。 「ああ。結婚するよ。彼女とな。」 川合に向けて発した言葉だったが、教え子達にも届いていたらしく、また歓喜の声が耳に響く。 、、、うるせぇ。 遠目で彼女を見ると、真っ赤な顔をして下を向いている。 ちょっと、やりすぎたか? 「もういーだろ。ほら!この話終わりな!」 もう、いい加減解放してほしいところだ。 大体、何でこんな事になってんだ? 全ては、隣にいる川合のせいだ。 ったく、、、。 覚えてろよ、、、。 ここは、早く退散した方がいいな。 もう、この場は、こいつらだけでもいいだろう。 はぁっとため息ばかりが出る。 この話が終わって、とりあえず一息ついていると、教え子たちは、早々に話題を変え、それぞれ盛り上がり始めている。 よくそんなに話す事があるもんだ。 久しぶりに会ったからなのか? 同窓会だからか。 まぁ、この2年会わなかった奴もいるだろうしな。 それなりに積もる話もあるのか、、、。 隣に座っていたはずの川合も、次々へ違う友達の所へと行き、声をかけ、盛り上がっている。 千草も、違う友達の輪の中に入り、楽しそうに話し込んでいる。 それぞれが、話したい奴と話し始め、自由に席を移動し始めた。 俺の所へも、ビール瓶を片手に教え子たちが押しかけ始めた。 「先生ー!ビール持ってきたよー!」 「あれ、先生、ビールじゃないの?もしかして、飲んでないの!?」 「ああ。飲んでねぇよ。車だしな。」 まぁ、わざわざお酌をしに来てくれたんだ。 それとなく近況を聞いたりして、教え子たちと久々に話をする。 大学生活を楽しんでる話やら、社会人の苦労話を聞きながら、「まぁ、頑張れよ。」と、それなりの言葉をかけつつ、、、。 こいつらは、人生これからだもんな。 これから苦労も沢山するだろう。 まぁ、これからの人生、色々あるだろうけど、頑張ってやってくれ。 教師らしい顔をして、教師らしいセリフを当たり前のように言っている自分は、やっぱり教師なんだよなと、ふと思う。 そんな事を思いながら、生徒達と話していると、男子生徒が、終わった話を蒸し返し始めた。 「先生、マジで結婚すんの??彼女可愛い??」 「、、、、。」 、、、またそれかよ。 もう、よくねぇか?その話。 「もういいだろ。行け!行け!」 ったく、、、。 教え子たちを追い払ったところで、上機嫌の川合が戻ってきた。 「いやぁー、俺、超モテモテで困ったわ!」 「、、、、。」 「東大のブランド力マジすげぇな!!川合君、東大なんでしょー?すごーい!かっこいいー!って女子たちの目がみんなハートよ!!」 「、、、へー。」 こいつ、相当話盛ってんな。 川合の話を適当に聞き流しながら、ふと、遠目の彼女に目をやると、彼女の両隣にいたはずの化粧の女子がいない。 化けた女子の変わりに、彼女の隣に座っているのは、茶色味がかった髪の毛に、紺色のニットを着た細身の男子だ。 ん?? 、、、誰だ? 川合に気づかれないように、遠目から2人を見る。 その男子生徒は、楽しげに、彼女の耳元で何か話しかけているようだ。 、、、おいおい、なんだ? 、、、距離感おかしくねぇか? その男が何かを話すと、彼女は笑い出して、何だか楽しげな雰囲気だ。 ?? 、、、誰だ?あいつ。 元教え子なんだろうが、顔を見ても名前がわからない。 あんな生徒いたか?? 不思議に思っていると、川合が、小声で俺に耳打ちする。 「気になるだろ。」 「、、、何がだよ。」 川合の鋭いアンテナは、俺の目線の先に気づいたらしい。 こいつに見透かされているのが、どうも府に落ちない俺は、知らない素振りをするが、、、。 だが、その態度が、又しても、川合にとっては気にいらなかったらしく、、、。 「まーた、クールなフリしちゃって。」 「、、、何がだよ。」 「気になってるくせに。まーた大人のフリして。」 「、、、だから、何がだよ!」 川合の言いたいことはわかる。 認めたくはないが、こいつに、全てを見透かされているのは間違いない。 小声で川合が呟く。 「あれ、委員長だぜ。」 川合の目線の先を追うと、楽しそうに話す男子生徒と、彼女の姿が目に映る。 、、、委員長?? 頭の中で、2年前の3年E組の教室の風景を思い出す。 委員長と言えば、、、そうだ、黒髪で底の厚い眼鏡をかけていたはず。 成績優秀で、素行は良好。 口数は少なく、いつも一人で黙々と勉強をしていた印象がある。 目立たないが故に、色々役割を押し付けられてはいたが、不満も言わずに、役目はしっかり遂行していた。 まぁ、交友関係は浅めで、クラスの中では少し浮いた存在ではあったが、、、。 周りから、何かと、委員長、委員長と呼ばれ、半ば茶化されていた場面を目にする事も何度かあった。 教師の俺からすれば、成績も良く、努力家で、何も手がかからない生徒だったが、、、。 確か、名前は、、、。 思い出した。 松下圭だ。 親は医者じゃなかっただろうか。 北大の医学部に現役入学したはずだ。 本当に、あの、松下なのか?? そうなのか?? 響の隣に座り、笑って話す男子をじっと見入ってしまう。 黒髪どころか、茶髪じゃねぇか。 眼鏡もしていないし、側からみれば、今時の大学生だ。 高校時代の松下は大人しくて、あんな社交的に話す奴じゃなかったはずだが、、、。 あんなに楽しげに話している所を見るのは初めてだ。 、、、まして、女の耳元で話す事ができるような奴じゃなかったはずだが、、、。 高校の時の松下とは、かけ離れすぎていて、衝撃が走る。 嘘だろ?? 「俺もさっき会ってびびったぜ。あれがまさしく大学デビューっていうやつだぜ。」 、、、大学デビュー、、、ねぇ。 川合の言葉に少し呆れてしまうが、嫌に説得力があるな。 感心していると、川合が小声で続ける。 「響もあんな楽しそーにしちゃって。まぁ、危うい事になんなきゃいーけどな。」 危うい事、、、だ?? まさか、な。 そんな事は、あるはずが無い。 「無い無い。」 川合に向かって、淡々と否定をする。 川合はニヤついた表情をしていて、この現状を楽しんでいるようだ。 「わかんねぇぞ?同窓会って、やばいんだぜ?」 「、、、何がだよ。」 「久しぶりに会った同級生が素敵になっていました!あの頃は何とも思っていなかったのに、、、あれ、この人こんなに素敵だったかしら??、、、なーんてな。あははっ!!!」 「、、、、。」 完璧楽しんでやがる。 下手な小芝居までしやがって。 バカか、こいつ。 「ねえだろ。おもしろがってんじゃねえよ。」 「あ、バレた?」 そう言って、川合はおどけた顔をする。 、、、ったく。 そんな事あってたまるか。 無いだろ。 響に限って、だ。 それは、あり得ない。 「でも、なんかあいつ危険な感じするんだよなー。委員長、北大じゃん?響も就職先、北大だろ。まぁ、何もなけりゃいーけどねー。」 川合は、意味ありげに、言いたい事を言い放ち、違う友達の輪の中へ入って行った。 危険な感じだと?? どういう意味だ? 川合の言った言葉の意味を考える。 ふと、視線を彼女の方に向けると、松下と、2人で楽しそうに話し込んでいる姿が目に入る。 ふぅん、、、、。 これから大学で会うこともある、、、って事か。 なるほど、、、な。
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