同窓会

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「じゃー、二次会、表通りのカラオケだから!川合で予約してっから!みんな先行っててー!」 店の出口で浩介が、みんなに声をかけている。 「りょーかーい!」 「先行ってるわ!浩介すぐ来いよ!」 「川合君、早く来てねー!」 みんなゾロゾロと店を出て二次会へ向かって歩き出す。 「響も行くでしょー?二次会!!」 ちいちゃんに声をかけられる。 「ううん、今日はパスする。ごめんね!」 「えー!響行かないのー??」 「うん。早く帰るって親に言ってきたんだ。だから、今日は帰るよ。」 「そーなんだー、、、残念、、、。」 ちいちゃんが、がっくり肩を落とす。 「ごめんね!ちいちゃん!!」 ちいちゃんには申し訳ないけれど、、、。 送り届けるって言ってくれた先生の気持ちを大切にしたい。 ちいちゃんが耳元でコソッと呟く。 「伊藤は?」 「、、、送ってもらうよ。」 そう言うと、ちいちゃんは、ぱーっと明るい笑顔で 「そっかー!!」と、嬉しそうに言う。 もう店には誰もいないから、きっと先生は足早に店を出たんだろうな。 「おい!俺らも二次会行くぞ!」 みんなが二次会へと散ったところで、浩介が私とちいちゃんに声をかける。 「響、二次会行かないんだってー。」 ちいちゃんが残念そうに呟く。 「ふーん。行かねーの?」 「ごめん、今日は帰るよ。」 そう返すと、浩介は、ふーん、、、と言いながら、ボソッと私に問いかける。 「響、おまえさ、委員長に連絡先聞かれた?」 ??? 委員長って、松下君のこと? 連絡先?? そんなの聞かれてないけど、、、なんでだろ? 「聞かれてないよ。なんで?」 「ふーん。聞かれてないんだ。まぁいーや。」 ??? 意味ありげに呟く浩介の言葉がひっかかる。 何だろう? そう思っていると、ちいちゃんも首をかしげながら、話に入ってくる。 「なに?何のはなしー??委員長がどーかしたのー?」 「いーんだよ!おまえは!話ややこしくなるから!ほら、さっさと行くぞ!!」 「なにさー!浩介のいじわるっ!!」 ちいちゃんと浩介の口喧嘩を、まぁまぁ、、、となだめていると、コートにフワフワとした雪が軽く止まった。 空を見上げると、雪が舞い落ちてくる。 「降ってきたな。寒いから、そろそろ行くぜ!じゃあな!また連絡すっからよ!ほら、千草行くぞ!」 そう言って浩介は、ちいちゃんを引っ張って二次会へと向かう。 「じゃーね!響!!またねー!」 ちいちゃんが、浩介に引きずられながら手を振る。 「うん。バイバイ。」 手を振って、2人を見送った。 深々と振り積もる雪。 雪が降る予報じゃなかったはずなんたけどなぁ。 傘持ってくればよかったなぁ、、、。 コートのフードをかぶって歩き出す。 浩介、何か言いたげだったなぁ? なんだろ?? あ、そう言えば、浩介に一言言ってやろうと思ってたんだった!! さっき、あの場で、先生に彼女がいるなんて話しだした事。 なんで浩介、いきなり、みんなの前であんな事!! 今度一言言わなきゃ!!! 先生、駐車場着いたかなぁ? 多分、先に出たはずだから、着いてると思うけど。 駐車場へと足早に向かう私に、後ろから呼び止める声がした。 「島田さん!」 ??? 振り向くと、そこには、肩で息をしている松下くんの姿があった。 「松下君!?」 松下君は、はぁはぁと、息があがっていて、見るからに走ってきたようだ。 茶色の髪の毛も、着ている紺のコートも、雪で濡れている。 !?!? 「ごめんっ!いきなりっ!!」 頭を下げて、膝に手を置いて、息を整えようとしているけれど、まだ、息があがっていて、少し辛そうにも見える。 「どうしたの!?走ってきたの!?」 「あっ、うん。そうっ!めっちゃ走ってきたっ。」 そう言って、松下君は、はぁはぁと、荒い息を吐き出す。 濡れた髪の毛は、汗なのか、雪のせいなのかわからない。 傘があれば差し出したいところだけど、持っていないし、、、。 湿った雪が降り続いていて、あっという間に、雪まみれになる私達。 「ごめん!ちょっとこっち来て!」 !?!? 突然、松下君に腕を掴まれる。 松下君に誘導されるがまま、雪よけのアーケードの下に入り込んだ。 「ごめん!急に!!」 アーケードの下に入ると、松下君は私の腕をパッと離した。 松下君は、頭についた雪を払っている。 突然の松下君の行動に、呆然と立ち尽くす私。 「すごい雪だね。」 そう言いながら、コートや鞄についた雪を手で払い除ける松下君。 「、、、あ、うん。」 松下君の突然の行動がわからない。 なんだろう? どうしたんだろ?? 「松下君、どうしたの?二次会行ったんじゃなかったの?」 「あ、うん。行ったんだけど、引き返してきた。」 、、、引き返して来た?? 荒々しい息も、やっと落ち着いたようで、松下君は私の問いかけに、平静に答えてくれるけど、、、。 私の頭の中は疑問符だらけで、、、。 急いで走ってまで、わざわざ私に何の用事だろう? 忘れものでもしたかな、私?? そんな事を考えていると、松下君が、私の顔を見て真剣な表情をして言う。 「俺さ、島田さんに、聞きそびれたことあって。」 ??? 聞きそびれた事?? 「なに?」 「いきなりで悪いんだけどさ!島田さんの連絡先教えて欲しいんだ!」 え、、、?? 連絡先!? 「、、、え、、、??」 まさかそんな事聞かれるとも思っていない私は、びっくりして、その場にフリーズしてしまった。 そんな私を見て、松下君は、少し焦った様子で口を開く。 「あっ!ごめん!急にこんな事聞くの失礼だよね!いや、就職の事とかさ、色々相談に乗れるかなって、勝手に思っただけなんだ!ごめん!」 そう言って、頭を下げる松下君。 「北大の事とか、色々教えてあげられるかもしれないし!困った事とかあったら相談乗るしっ!」 そう言う松下君は一生懸命で、真っ直ぐで、、、。 真っ直ぐだからこそ、返答に困ってしまう私。 連絡先、、、って携帯の番号、、だよね?? え、、、それって、、、。 いやいや、そんな、深読みする事じゃないよね。 相談に乗ってくれるっていう松下君の善意なんだろうけど、、、。 でも、携帯の番号を教えて、電話が来ても、、、。 色々頭の中で考える。 何て返事をしていいのかわからず、時間だけが過ぎる。 どうしよう、、、。 でも、こうやって、走ってまで追いかけてきてくれたんだし。 松下君、悪い人じゃないし、、、。 そう思いながらも、なかなか、身体が動かない。 そんな私を見て、松下くんは肩から下げていたショルダーバッグから、何やら手帳を取り出し、ペンですらすらと何かを書き始めた。 ???? 松下君は、書き終えたメモを、その場でビリッと破き、私に手渡す。 「これ、受け取って!」 「、、、え?」 ??? 松下君からもらった紙を見ると、携帯の番号と、アドレスらしきものが書いてある。 え、、、これって?? 「俺の番号と、アドレス。いつでもメールくれていーから!」 え!?!? あまりに速いテンポについていけずに、呆然と立ち尽くす私に、松下君が話を続けた。 「あ、いや、、、。ごめんっ!相談乗るなんてかっこいい事言って!いや、相談も、もちろん乗るけどっ、、、!」 ??? 何が言いたいんだろう?? 立ち尽くす私に、松下君が顔を少し赤くして言う。 「俺、島田さんの事いいなってずっと思ってたんだ。」 、、、え!?!? 「今日会って、島田さん、高校の時と全然変わってなくて、やっぱり、島田さんいいなって!」 、、、え!?!? どういう意味!?!? 「急にこんな話びっくりするよね!ごめん!!でも、言わなきゃ後悔すると思って!!俺、島田さんと仲良くなりたいんだ。友達になりたい。よかったら連絡してほしい。」 、、、え?? なに!?!? 頭の中が混乱している。 一体、どういう事!?!? 松下君が、、、私の事いいなって思ってる??? 、、、、えー!?!? 「いきなりこんな話されても困るよね!ごめん!!でも、よかったら、連絡して!大学内の見学とかさ、いつでも付き合うから!!」 松下君は、顔を赤くして、少し照れたような顔をしながら言う。 え!!!! そんなっ!!! どうしよう、、、っ!!! 松下君の急な告白めいた話に、困惑しきりの私。 「ごめん!俺、困らせる事言ってるよね?でも、ほんとに、相談でも何でも乗るから!って、俺、言ってる事、ほんと、めちゃくちゃだけど!あー、ほんっとごめん!!」 顔を赤くして、興奮しながら話す松下くんの姿からは一生懸命さがすごく伝わってくる。 けど、、、。 私には、付き合っている人がいて、、、、。 だめだ!!ちゃんと言わなくちゃ!! 「あのっ、松下くんっ、、、私ねっ、、、」 そう言いかけた私の言葉を、松下君は素早く遮る。 「じゃ!俺もう行くわ!ごめんね!時間とらせちゃって!!」 そう言って、松下君は頭を下げて、足早に去って行ってしまったんだ。 「あの!ちょっと、、、!」 手の中に残された一枚の紙切れ、、、。 松下君の想いが詰まった紙を手にしながら、雪の中を走り去る松下くんの後ろ姿を目で追うしかできなかった。 え??? 松下君が、私を、、、いいなと思ってた?? いいと思ってたって、、、それって、どういう意味? 、、、好き、、っていう事!?!? いや、まさか、、、。 でも、今の、、、。 、、、告白!?!? そんな!! どうしよう、、、。 私の手の中にある一枚の紙切れ。 これの意味する事は、きっと、、、。 どうしよう、、、。 雪の中に消えて行く松下君を遠目で追いながら、その場に立ち尽くす私。 一体どうしたらいいの???
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