あのね

2/13
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
あれは、忘れ物を取りに行った放課後。 その日、私は出会ってしまったんだ。 君は、私の窓際の席に座り、青い綺麗な空を眩しそうに眺めていたんだ。 キラキラ光る太陽に目を細めた横顔がやけに色っぽく、綺麗で、君のいる風景が、まるで展覧会の作品のようで目が離せなかったんだ。 君は私に気付いて、だるそうな声で「ごめんね〜、ここ浅井さんの席だよね」と席を空けてくれたんだ。 私は何も言えず、忘れ物を回収し、そそくさと家路を急いだ。 なんだかとても心がざわついて、でもそれが、私にはどんな気持ちなのかわからなかったんだ。 私なんかの名前を知っていたことに、空気の私にあんなに自然に話かける人がいたことに…とても戸惑ってしまったんだ。 あれから君が、気になって仕方がなくなって、いつの間にか君を探してしまうんだ。 休み時間の読書以外の過ごし方を、始めて私は知ったんだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!