あのね

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「おはよー」 「あ、おはよー」 下駄箱で交わされる挨拶に思わず振り返ってしまうけど、私に挨拶してくれる友達なんかいない。 下を向いたまま教室まで歩く。 窓際の席、みんなが羨ましがる席なのに、窓から眺める空の青さも、風に揺れる木々のざわめきも、目に映る景色がどんなに綺麗でも、今の私には共有できる友達なんていないんだ。 一人ぽつんと、この窓際の席に座り本を読むことしか、退屈な休み時間の過ごし方を知らないんだ。 寂しいなんて気持ちは、とっくに忘れてしまった。 これが私の普通だから。 イジメとかそんなんじゃなく、空気みたいに目立たずにいたい。 ただ、それだけなんだ。 でも、こんなに青い空を見ていると、たまに…無性に…「あのね」って話しかけたくなるんだ。
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