おにぎりあたためますか

3/4
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「そろそろ積もりますかね」  一昨日からしとしとと降っていた雨は昨日の朝方雪に変わって、そのまま一日降り続いた。  雨に溶かされたはずの雪がまた積もり、雪かきをする姿を目にするようになる。 「もう一度溶けるかな」  今日は休講につぐ休講で、それほど入ってなかった授業も無くなり一日中暇になったため、バイト先のコンビニのイートインスペースでまったりとお茶してた。  常連のおばちゃんはアイス食べながら「今はおばちゃんたちの常識は通じないからねー」と眉間に皺を寄せ「今年は夏が暑かったから冬は寒いと思うけど、それもどうなんだか」と外を見ながら呟いていた。  確かにこれでもう一度溶けると、こっちの常識とはちょっと違う。でも積もるには早い気もするんだよなぁ。 「今日は積もると思うから、ウチに泊まれば?」  そう言った真田に、少し呆れ気味に目を向けると意外にも真剣な顔をしていて、返事に困る。 「おばちゃんにはよくわかんないけど、若い時には勢いで行動すんのもありだと思うけどね。若いってそういうもんだと思うけどね」  こっそり呟いたおばちゃんに静かに振り向くと、ニッコリ笑って頑張れって言う。  そうなんだけどさ。わかってるんだけどさ。  ここでうんって言えば、多分長年の夢だった『恋人』が出来るんだと思うけど。ネコになることに躊躇するのは仕方ないと思うんだよ。ほら、体が中から変えられちゃう不安とか、できれば将来は田舎に帰りたいとか、経験するとバレちゃうとか。  なんにも知らないのに、世に蔓延するBL小説や漫画に毒された俺は中々踏み切る事が出来ない。  真田の事は嫌いじゃない。その、嫌いじゃないってだけで全部渡していいのかわからない。  卒業まであと二年。もう少し足掻いていいだろうか。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!