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12月だというのに、雨が続いてせっかく積もった雪は溶けてしまった。
「俺と寝たら、気持ちよくて戻れなくなっちゃうかも〜」
ヘラヘラと笑いながらいう真田は、なんならヤリチン呼ばわりしても問題ないほどに、セフレという名の『おともだち』がいる。それもかなり大量に。
今日はなんとか君で、明日はなんとかちゃんで、そんでもって昨日はなんとか氏。
年齢も容姿もバラバラで、結局はそういう事ができれば満足なんじゃねぇか、とクサクサした何がが胸の中に渦巻くのに。
「凛」
真剣な顔で呼ぶから。
昨日一日降り続いた雨が今朝早くから雪に変わって、うっすらとコンクリートを白く染める。
車の通った跡や誰かの歩いた跡は、せっかく積もった雪を汚すようで、もの悲しい。
真田に会いに来る男たちは、タイプは違うけどそれなりに整った顔をしていて、なんで俺を誘うのか、真田の趣味を疑う。
だってわざわざタチである俺を誘う意味なんて、暇つぶしとか毛色の変わった者への興味とかそんなもんなんじゃないかと、そんな風に考えるのは仕方ないんじゃないだろうか。
ふわふわと舞落ちてくる雪は、昼の暖かさに溶けてしまうだろう。
本格的に積もるのは、今月の後半で、クリスマスに積もるかはわからないけど。
さっき、ほんの少しだけ触れた、真田の手は暖かくて、雪が溶けるくらいには暖かい外でも、数分歩いただけで指先から冷える季節は、その手にすがりつきたくなる。
積もっては溶け、また積もる。積もったまま少し溶けて、昼の暖かさにまた表面だけ溶ける。夜には冷えて、ツルツルに滑る道路のように、真田の掌であっちにツルツル、こっちにツルツル。
良いな、って思えば浮ついた言葉にドンて落とされて、頭を撫でられてちょっとだけ上がるのに、また溶けてしまう雪のようにしゅるしゅると萎む。
溶けたらぐちゃぐちゃになって、靴の中まで水が入ってきて、足の先からドンドン冷えていくのと同じで、沈んだ気持ちは思考を悪い方へと向かわせる。
揶揄っているだけなら、そんなに真剣な顔で呼ぶな。
真剣な顔で呼ぶなら、その場しのぎの人を作るな。
まだ、真田と付き合いたいとか好きだとかそんなの考えてないのに、自分勝手で嫌になる。
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