海の声

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「お母さんは? 今日仕事休みなの?」 「うん、まあね。たまにはいいでしょ」そう言って新聞から目を離さない。 「土日休みなんて、めずらしいね」  パンに目玉焼きにりんごにふた切れ。これがいつもの朝ごはん。  お母さんは不定期の休みでなかなか土日休みがない。お母さんと休みが被るなんてことは久しぶり。私は土曜日に一日中アルバイトを入れていて、日曜日が一日中休み。だから一週間の疲れは全部日曜日にとるのだ。平日はといえば、学校に行かなくちゃいけないんだから。 「そうね」新聞を見続けながらお母さんは言う。  そっけない、といったほうがいいだろうか。いや、でもこれがいつものお母さんだ。  私もそれ以上の会話が見つからないし、寝起きのせいで頭も回転しないので、さっさと朝食を食べた。朝食を食べる音と新聞のこすれる音だけが部屋中に響く。 「ねえ、汐莉」 「な、なに?」  唐突に話しかけられて、持っていたりんごが皿の上へと落ちた。 「休みが被っているならさ」  お母さんの目がこっちをのぞきこんだ。お母さんの細い目で。 「行かない?」  どこに? 私は聞かなくてもわかった。  だってお母さんはこの時期になると必ず言うから。 「いいよ」  ちょうど夢で見たし。 「どこにいくのかわかってる?」お母さんは鼻で少し笑いながら言った。 「わかってるよ。だってさ、そろそろ近いでしょ」 「そう。忘れていたらかわいそうだわ」  お母さんは読んでいた新聞を閉じる。 「仕事でいつもいそがしいし、ちょうどその日は仕事がはいっちゃったから行けないし。今日ぐらいしか時間はないの」  お母さんは本当に忙しい人なのだ。仕事を週五勤プラスパート三日。夜遅くに帰ってくる日や、はたまた帰ってこられない日もある。仕事が終わってからその足で副業のパートもこなすこともある。お母さんからしてみたら、やっとのことの休みだろう。 「そうだよね。私も平日は行けないし」 「なら決定ね。お皿はお母さんが洗うから、早く着替えて準備して」
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