よしのすけくん 〜バリ旅行記〜

しゅっぱつしんこう

　ほら、予感は見事に的中。ここからしばらくバスの旅のようだ。全く、大人という生き物は暇なことが好きらしいが、僕には耐えられない。僕は暇なのが大嫌いだ。

　ああ、また暇になってしまう・・・と憂鬱な気分もつかの間、すぐに僕は窓の外側に夢中になった。
　車、バス、車、トラック、バス、車。

「ばっ！ばっ！」
「かー！」
「ばっ！」

　白状しよう。まだ僕は、バスも電車もトラックも、いっしょくたに『ばっ』と表現してしまう。ママはそのたびに
「わあ、トラックだねえ。」
「でんしゃだねえ。」
と言い直すが、今のところ不便は感じていないのでしばらくはこのままでいいと思っている。口周りの成長の都合で発音できる音数が少ない僕にとって、大人の言語を発音するのはなかなか難しいことなのだ。

　窓の外をみたり、ママに抱きついたり、お弁当の蓋を投げたり、パパに抱きついたり、そうこうしているうちに、だんだんと眠たくなってきた。

　最終的にままに抱きついて心地よいぬくもりと振動を感じているうちに、僕のまぶたはゆっくりと閉じていった。