しゅっぱつしんこう

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 程なくして同じ階の別の部屋に案内された僕は、靴を脱いで歩き回り、ベッドの上ではしゃいでは降りてまた探検をし、広い部屋で最高の開放感を堪能した。  そうして歩きまわっているうちに、僕はそれを見つけた。  お風呂場らしい場所からママが呼ぶのでトコトコと歩いて向かっていると、テーブルの横の棚の中に何かあるのが目に入った。それは黒い箱で開け閉めできる扉がついており、その扉には、なんと、たくさんのボタンが並んでいたのだ。たまらず手を伸ばしボタンを押してみる。ピッ、ピッ、ピッ。音がなる。なんだこれは。たまらずもう一度押してみる。ピッ、ピッ、ピッ。僕は夢中になった。  しばらく僕がピッ、ピッ、ピッと鳴らしているとママが来た。これは「金庫」というらしい。大変良くできたおもちゃだと思った。こんなにたくさん音のなるボタンが並んでいるなんて最高じゃないか。しかも子供だましではないかっこよさがある。  お風呂から上がったあとも、僕はしばらくこの金庫というものを押し続けた。
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