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・くだらない願いでは光らない。
・物事の区別がしっかりついた大人になるまで使えない。
・できるだけ肌身離さず持つこと
簡単なような、難しいような、そんな説明を終えた老人は私の頭にポンと手を置くと優しく数度撫でた。
「優しいお前さんなら、お前さんにとって大事な願いのために使えるだろう。だからその時まで――」
待っていなさい
そう言って老人の手が頭から離れた。
強めの力で撫でられたために俯いていたいた顔を上げると、そこに老人はもういなかった。
人ごみの中だったこともあり、一瞬で見失ってしまった。
老人の勢いに押されて受け取ってしまった球はまだ手の中にあるのに。
困って、手の中にある球を見ると、私は驚いて何度も瞬きをした。
その珠は極彩色の輝きをやめ、どこにでもあるようなただの青いスーパーボールへと成り替わっていたのだ。
でも逆に、ただの青いスーパーボールであれば、拒否する必要はない。
手になじんだ吸い付くようなゴムの感触をぎゅっと握りしめることで、先ほどの輝きは幻でこれは最初からスーパーボールだったんだと自分に理由づけた。
ちょっと残念に感じた気持ちもあったが、それはさっさと払拭して「優しいことをしたから綺麗なスーパーボールを貰えたんだ」と思うことにした。
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