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そんなことがあって、月日は10年以上流れ。
もうそれの存在すら忘れていた頃、思い切って家中を大掃除していた私は見つけた。
見つけたのも、スーパーボールとは思えない宝石のような光を煌めかせたからだった。
「ああ、懐かしい……」
思わず指でつまみ持ち上げ、電球の光に透かしながら眺めた。
濃い青色に見えたのに、光に当てた一瞬、記憶の中にある青の極彩色の輝きが見えた。
一瞬すぎたものだから、光をいきなり当てたことによる錯覚だろうととくに深く気に留めなかった。
光に当てるのをやめ、近くにあったテーブルの上にそっと珠を置いた。
もう、あれから何年たったのだろう
今の私には愛する旦那がいて、目にいれても痛くないほどの子どもがいて、幸せという名に相応しき家庭をもった、とても幸せな人生を手にしている。
しかも、旦那は私が働かなくても十分貯金しながら生きていけるほどの高所得者。
それだけでなく、育児への協力も惜しみなくしてくれ、家事だって手伝ってくれちゃうスーパーマン。
これ以上の幸せなどないだろうといえるほど、幸せな人生。
不満など、一つもなかった。
「ああ、でも……」
ふと、時たまに思う願いが頭をよぎり、思わず独り言が口をついて出た。
けれどそれは、現実には到底無理で、別に叶えなくてもいい願い。
そう思っていると、目の端で珠が煌めいた。
そちらを向くと、時節光に反射するように一定のリズムを刻んて輝く珠があった。
掃除をしながらせわしなく動いているせいで、規則正しいリズムを踏んで反射するように見えるだけなのかとも思ったが、掃除している手を止めてもその輝きは止まらない。
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