決意あらたに

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決意あらたに

 翌朝。  朝一番で清水寺へ行こうと思っていたので、目覚まし時計が五時半に鳴った。  けれど、起きられなかった。  さんざん泣いたので、たぶん目が腫れて真っ赤だろうし、テンがいないと神の道を通れないのでわたしは狐庵の外に出られない。  しかしそれでも、六時に、部屋のドアが控えめにノックされた。テンである。 「庵、おはよう。寝ているのか」  いつもと変わらない、テンの穏やかな声だった。 「庵? どうかしたのか」  説明しないと、立ち去ってくれそうになかった。わたしは、ドア越しになかば怒鳴るような口調で言った。 「……頭が痛いの! 言い出しておいて、ごめんなさい。今日は行けません」 「頭痛か?」 「もう少し寝たら、たぶん治ります。冷菓店には行きます」 「分かった。では、あとでまた。お大事に」  テンの気配が遠ざかる。追い返してしまった。せっかく来てくれたのに。仲直りできそうだったのに。  わたしは、もう一度ふとんをかぶって、ぎゅっと目を瞑った。八時半に狐庵を出れば、冷菓店にはじゅうぶん間に合うだろう。
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