ドゥーユーラブ・ザ・ワールド?

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ドゥーユーラブ・ザ・ワールド?

   理屈だけの世界は味気なく、情動だけの世界は陰惨だ。  二つが相和して、成り立つのが世界だと思う。  青の中、陽の光を受けてところどころ金色に輝く海を見つめる。  海は一色ではない。  朝焼けや日中の光、夕焼けや夜により、様々な顔を見せる。  潮騒を聴きながら、深優(みやす)はそんなことを考えていた。  桃色を仄かに刷いたような白い頬。珊瑚色の唇。短い髪は少し焦げ茶色じみている。  青に銀糸の刺繍が施された衣服を身に纏い、深優は両腰に差した双剣の柄に手を置いていた。  深沈とした思考は、殺気により中断される。  考えるより早く、深優は動いていた。  紫電一閃。  今、まさに深優に襲い掛からんとしていた異形を切り伏せる。  断末魔の声さえ上げず、それらは砂礫と化し、風に吹かれて消えた。  送られるは、緩い拍手。 「いつから見ていらしたんですか。総帥」  白銀の長い髪を風に躍らせる男を、深優は淡々とした眼差しで見つめた。 「少し前だよ。君が物思いに耽っているようだったから、声を掛けなかった」 「助力していただいても良かったのでは?」 「君の実力は熟知している」  総帥、と呼ばれた男はそう言って、緑の双眸を細めた。  世紀末日本。  花(か)泊(はく)と呼ばれる隠密裏の集団があった。  人心の荒むにつれ生じる異形を滅する為に結成された有志による集団である。  花泊を束ねるは(じん)という名の総帥。花泊に多い特異能力者の一人だが、その能力の全貌を知る者は極めて少ない。  深優は花泊の一人であり、また、仁の能力を知る数少ない構成員の一人でもあった。
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