第10章:逃げるが勝ち

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 打ち合わせ冒頭で、今朝警視長に報告した内容をメンバーにシェアする。  早乙女凛の兄の情報は、今時点では伏せる。    組織犯罪課のガサ入れは、数日中に行われる予定だ。  凶器になったメスは、早乙女家から持ち出された可能性が高い…同時に捜査するには、ちょうどよいタイミングになるはずだ。 「大石光は死体遺棄、殺人関与、証拠隠滅、…3つの罪を犯しています。これ以上の余罪はなさそうなので、起訴は年始早々にされるはずです。」 「鍛治拓磨らが犯した罪は、どうなるのですか?」山下くんが質問する。 「起訴はされないが、おそらく賠償問題が発生する。相互の家族間で解決になると思う。」答えながら、事件はずっと続くんだ…と改めて思う。  柏木ちゃんは、SN’Sの報告をクイックにする。 「光ちゃんが病院から警視庁に戻ってきた際に、車種などを特定する投稿が確認されています。廃墟病院への移動は、更なる注意が必要です。」  光は、ずっと追われる身になってしまうのだろうか…。  確かに、拘置所が安全な場所…というのが頷ける。  佐藤さんから、ゼウス用携帯をコインロッカーに格納した人物の映像をもらう。  早乙女海人が関わっていたなら、この黒づくめの男性は、組織が手配した人物だろう。光のコメントが欲しい。  打ち合わせを終え、いつもより少し早い時間に、光の様子を見に行く。  今日は制服を着ている。簡易ベットに座り、ボーっとしている。  …何を考えているんだろうか。
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