第10章:逃げるが勝ち

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「光ちゃん今日は体調どう?」  取り調べの最初の質問だ…。単純なので、光の体を心配をする。 「いつもそんな事聞かないのに、どうしたの?」  光は不安な顔になる。   「…なんとなくだよ。気分は良好?」 「ちょっと不思議な感じ。昨日は、何であんなに怒ったか…よくわからないの。」  両親に激おこした件か。  感情をコントロールできなくなったのは、ブサイクホルモンのせい? 「何かにイライラしているの?」 「うん。今までは、イライラする余裕がなかったのかも。ここに閉じ込められて、どこかで安心したというか…。」珍しくボソボソと回答する。  光なりに、ある種の成長をしているのかな。 「体調に変化があったら教えてね。今日は、色々質問があるんだけど…辛かったらすぐ言ってね。無理しないように。」  光は無言で頷く。  廃墟病院で見つかった証拠を確認するのは初めてだ。    順序よく質問をしていかないと、負担が大きいかもしれない。  まずは、病院裏口の写真を見せた。 「みんなで病院に入ったのは、裏口から…でいいかな?」 「うん。裏口の前で集合してから、入りました。」  光は写真を見て、懐かしそうな顔をする。 「病院内は光ちゃんが案内したの?」 「うん。ゼウスは『オリュンポス十二神のサインが書いてある部屋があるから、そこに一度集まるように』と伝言を残してました。」  チャットルームでは、そんな記述はなかった。 「ゼウスはどうやって伝言したの?」 「裏口に張り紙がありました。それも再度訪問した時には、なくなっていたけど…。」 「部屋は、たくさんあると思うけど…。」 「張り紙には『ヒント:アルティメスとデーメーテールがよく知っている部屋だよ』と書いてました。」 「すぐ、どこかわかったの?」 「はい。私たちがよく知る部屋は、剣がいたところです。」  なるほど…。剣くんはあの部屋に入院していたのか…。
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