第10章:逃げるが勝ち

9/12
416人が本棚に入れています
本棚に追加
/286ページ
 他のメンバーがいるので、まだ早乙女海人の写真は見せられない。    …時間の問題だ。あと数日で情報は解禁されるだろう。  取り調べを終え、鑑識チームに先行情報を取りに行く。 「中島さん、昨日は休日中にお電話してしまい、申し訳ございません。取り急ぎ、凶器の指紋について確認させて頂けますか?」 「ああ、岩崎警部。ちょうど、凶器のメスの指紋が出たところです。詳しい結果報告は、別途と思っていたのですが…。」 「メスの指紋から、誰が所持していたか…わかりましたか?」 「早乙女凛と大石光の指紋が確認されました。持ち箇所から、早乙女凛が自殺のために使ったのは、間違いなさそうです。他にも…数人の指紋が確認されており、只今検証中です。」 「指紋は大人のものですか?例えば、早乙女凛の父親とか…。」 「はい。大人と子供…両方の指紋が確認されています。子供のは…他の被害者のではないようですが…。」中島さんは、歯切れの悪い回答をする。 「何か…心あたりが?」 「…大石光の手紙から出てきた指紋と…似ているんです。」  早乙女海人が未成年売春に手を出していたら、10代の子を用意するのは難しくないかも…。剣くんだと光が思っている相手は、組織の傘下の誰かなのでは?  お礼を言ってデスクに戻る。  早乙女海人の自宅捜査とガサ入れのタイミングを相談するため、井上警視に結果を共有する。  井上警視は、即座に組織犯罪課に電話をする。横で様子を伺っていると「なんだって?」と珍しく取り乱す…。
/286ページ

最初のコメントを投稿しよう!