第10章:逃げるが勝ち

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「岩崎くん…落ち込むな。早乙女海人の情報は、開示許可が出た。事件解決にとっては、有利に働く。まだ殺害の動機が、はっきりしていないだろう?解明できるチャンスだ。」  井上警視にしては、珍しく語りかける。そこまで落ち込んだ顔をしていたんだろう。 「そうですね。チームに情報共有していいですか?…捜査もこれで進めやすくなります。」 「もちろんだ。大石光の一方的な犯罪じゃないかもしれない。おそらく早乙女海人にコントロールされている部分が多い。早乙女海人の顔も覚えているかもしれないので、直接、取り調べで聞いてくれ。」 「はい。有難うございます。」 「今日はクリスマスイブだぞ!たまには…早めに上がってデートでもしたらどうだ?」  そうだった!今日クリスマスイブじゃーん!全く忘れた…。  柏木ちゃん誘って、どこか行こうかな…?  先ほどの取り調べは、柏木ちゃんを置いてきぼりにして、どんどん進めてしまった…。早めに、フォローしないと。  席に戻ると、柏木ちゃんは、佐藤さんたちに指示しながらスマートに仕事を進めている。 「柏木ちゃん、ちょっといい?」 「え!はい。」突然、呼ばれてビクッと反応し、慌てて席に来る。 「…進捗はどう?」 「山下くんがサポートに入ってくれてから、解析は倍のスピードで進んでいます。ゼウスのコメントですが…今のところ、守屋杏奈と水谷蓮以外からは発信がないようです。また、他のコーヒーショップからも映像が届いています。只今、解析中です。」 「そうか。今日の定時前に、いつものメンバーで30分打ち合わせやろう。俺からも共有したい情報があるから…。」  柏木ちゃんは「ハイ。」と答え席に戻る。  …あれ、今夜のディナーいつ誘えばいいんだ?  …アホなので改めて気づき、焦る。
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