第11章:君には大きな翼があるから

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 久しぶりの長時間の打ち合わせだ。進行は自分でやろう。  ボードの前に座り、メンバーの顔を見る。  連日の激務にも関わらず、みんな前向きな表情をしている。  士気を上げたいと願い、冒頭にコメントする。 「第1回目の取り調べから、一週間にも関わらず…捜査はかなり前進しました。残念ながら、早乙女海人には逃げられましたが…これは事件の真相に近づいた証拠です。新たな事実を元に、今後の捜査の方針を皆さんで固めましょう。」  松村くんと山下くんは、澄んだ目で俺を見る。ベテランの徳永さんと佐藤さんは、いつもの斜に構えた感じではない。  チームが同じ方向を見て進んでいる…!と実感でき嬉しい。  柏木ちゃんは、どうだろう。あれ…?表情にいつものキラキラ感がない。顔をじっと見つめると、柏木ちゃんは、すっと目をそらす。そらした方向を追い、目を合わせようと必死に顔を動かす。  柏木ちゃんが、前向きなってくれないと!事件解決は、柏木ちゃんの力が必要なんだ!想いが通じたらしく、やっと微笑んだ。   「今までは、唯一の生存者である大石光を中心に、事実確認をしてきました。…大石光は個々への殺意はなく、友達や自分を助けるため犯した罪…と自供しています。」  大石光が嘘をついているのでは…?と言うメンバーはいない。 「組織犯罪課が水面下で調査をしている人身売買と売春の件に、今回被害者になった守屋杏奈自身と早乙女凛の兄が関わっているのがわかりました。大石光以外は町田の中学校の生徒です。大石光の指示ではなく、被害者は何らかの因果関係があり廃墟病院に集まった可能性が高い…。」  ボートに27日、28日と書く。 「大石光の廃墟病院の実況見分は候補日です。この日までに、守屋杏奈はじめ他のメンバーの捜査をします。」 「大石光の勾留期間を考えると、28日まで…は少し早くないですか?」と徳永さんが質問する。  勾留期間は、1月初週まで延長される事が、昨日正式に決まった。 「そうですが、年末年始は休みの人が多い。野次馬防止目的…です。」 「なるほど。」と徳永さんは納得する。 「今から調査計画を話し合います。その前に、質問や意見はありますか?」みんなの顔を見て、質問する。
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