第11章:君には大きな翼があるから

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「光ちゃん、あの日廃墟病院で起こった事を…詳しく教えて欲しいの。」  柏木ちゃんは、優しい声でお願いする。  光はコクリと頷く。 「裏口から病院に入って、まずは、剣くんがいた病室に行ったのよね。そこでオリュンポス十二神集結のサインを見つけた…。誰が各神々のサインをしようと言い出したの?」 「確か、ヘルメスだったと思う。ペンは既に床に置いてあったので、それを使って1人ずつサインをした。」 「ヘルメスは、リーダーシップを取るタイプだった?」  水谷蓮くんは、イケメンの人気者だった。凛ちゃんと杏奈ちゃんは、名前くらいは知っていたかもしれない。 「そうだったと思います。」光は水谷蓮の写真を見ながら答える。 「神々の名前を書く前は、誰がどの神か…わからなかったの?」 「はい。」 「鍛治拓磨くんが『アレース』と書いた時、みんながどんな反応したか…覚えている?」  柏木ちゃんは、鍛治拓磨の写真を光に近づける。 「え?この人が?…っていう雰囲気がありました。ゼウスは、アレースは神奈川県で有名なイケメン…と言っていたので。失礼だけど…そんなカッコよくなかったから。」  光は、鍛治くんの写真を見ながら、淡々と答える。ひどい奴だな…。 「みんなは、アレースが他の誰かだと思っていたのかな?」柏木ちゃんは、質問を続ける。 「そうみたいです。私はあまり気にしませんでしたが、アテーナ(杏奈ちゃん)と凛ちゃんは、すごく動揺していたように思えました。」  裏で糸を引いていた早乙女海人がミスをして、鍛治くんを選んでしまったのだろうか?  アレースがどの人物を想定していたかがわかると、動機がもう少し見えるかもしれない。  佐藤さんの裏サイト調査に期待するか…。  
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