第11章:君には大きな翼があるから

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「じゃあ…『鍛治くんをアレースではない』と、最初に言った人物を覚えている?…確か、アレースではない…と言われた鍛治くんは、動揺してハンマーを出したんだよね?」  柏木ちゃんは、光の以前のコメントを頼りに、杏奈ちゃんが殺害されたきっかけを聞こうとする。  光は俯いて考える。思い出そうとしているのだろうか。 「凛ちゃんとアテーナ(守屋杏奈)が、ほぼ同時に言ったような気がします。その後に『アレースはxxなはずじゃ!!』とヘルメス(水谷蓮)が言ったんです。…ごめんなさい。ヘルメスが言った名前は、よく聞き取れなかったの。」  珍しく光は申し訳なさそうに答える。 「大丈夫よ。教えてくれて有難う。ヘルメスが言った名前に凛ちゃんとアテーナは反応した?」 「はい。凛ちゃんとアテーナは、反応しました。そのすぐ後に『アレースはヘーパイストスだ』とヘルメスが言ったの。それにヘーパイストス(鍛治拓磨)は憤慨して、ハンマーを取り出したんです。」  でも、そのハンマーは鍛治拓磨ではなく、早乙女凛と水谷蓮に使われたんだ。  光の表情を見る。  視線に気づき、光も俺を見る。  変化に敏感な光は、臨機応変にその場を解決したはずだ。  剣くんがいた場所を…血で汚したくない。そう思ったんだろ?心でそう呟く。 「光ちゃん、へーパイストスと言われ怒った鍛治くんは、ヘルメスを攻撃したの?」  柏木ちゃんは、慎重に質問する。 「いいえ。あの部屋でそんな事させません。へーパイストスは、私が蹴って気絶させました。」  光は、柏木ちゃんに目線を合わさず、俺の目を見たまま答える。
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