第2章:冷たい共感力

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「なんだか……大石光ちゃんがそうだとしたら可哀想です。脳の構造が違うって先天的なものですよね?」  柏木ちゃんは優しい発言をする。 「そうだな。だけどこういう脳の構造を持つ人全てが殺人を犯すわけではないんだ。むしろ社会的に成功している人もいる。」 「そうなんですか?」と徳永さんは驚く。 「はい。例えば、恐怖を感じにくいので思い切った決断ができる、共感力が低いので冷淡な判断をする。あと良心、モラルが低いから浮気しまくる。って言えばどんな人物が思いつきますか?」 「うーん。あ!大きな会社の社長とかですかね?経営判断とか冷酷なリストラとか…あと愛人がいっぱいいるみたいな。」と徳永さんは答える。 「そうです!情け容赦ない判断をして会社をうまく動かす経営者がこの特有の脳の構造を持っているとアメリカの実験でわかったそうです。」 「うへ〜。紙一重ですね。」と徳永さんは大きく息を吐く。 「なんちゃらと天才は…ですよね。因みに彼らは熱い共感力ではなく『冷たい共感力』を持っていると言われています。すべてを合理的に考える傾向があるんです。大石光は『冷たい共感力』で4人をうまくコントロールしていたんじゃないのかと思っています。」  もう少し話したいが1時間が経った。  各々の課題をまとめて今日は解散しよう。 「説明が長くなってしまいましたね。念のためフォローアップ事項を繰り返します。佐藤さん『Learn-up』のトークルーム、彼らが使っていた以外のところも含めてオリュンポス十二神の名前がなかったかを確認お願いします。またゼウスのアカウント捜査も続けてください。」 「はい。岩崎警部。すぐ取り掛かります。」 「徳永さんは大石光の家宅捜査の令状を準備お願いします。弁護士が入っているのでちょっとゴネられるかもしれません。あと、大石光の母親が薬剤師としての経歴と今の職場の裁量を確認お願いします。睡眠薬など薬を簡単に持ち出せる立場にいたかもしれないので。また、廃墟訪問は日程候補はこちらで考えます。」 「はい。薬物といえば先ほど報告できませんでしたが、最後の被害者である早乙女凛の皮膚に風邪薬のような成分が残っていたそうです。」 「そうだったんですか。なら尚更だ、大石光は薬物を使った可能性が高いと思います。」 「あと、柏木ちゃん、大石光の身体結果のヒアリング何時からアポ取っている?」 「夕方4時です。」 「了解。柏木ちゃん、ヒアリング同行してくれるかな?女性の意見が欲しい。」 「はい。」 「それじゃあ、ちょうど昼休みだな。また明日の夕方集まりましょう。」  最後はちょっと駆け足だったが時間内にミーティングを終わらせ、俺はあるところに向かう……。
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