第2章:冷たい共感力

19/20
415人が本棚に入れています
本棚に追加
/286ページ
 あるところとは、大石光がいる拘置所だ。 「あ、岩崎警部。大石は今ちょうど昼飯を食ったばかりです。彼女に気付かれず様子を見れる場所があるのでこちらへどうぞ。」  予め依頼していたので警備員はスムーズに対応する。  拘置所は相部屋になる場合もあるが、大石光は他人をコントロールする可能性があるので一人部屋にいる。  3畳ほどのスペース。トイレと流し付きで簡易的な寝具がある部屋だ。    実は部屋の天井と壁には監視カメラが付いている。俺は警備員に連れられ監視カメラがある部屋に向かう。  天井からのカメラは部屋の真ん中に体育座りをしている大石光を映す。  拘置所内での服装は自由だが、先ほど接見をした時に着ていた制服のままだ。  壁にある監視カメラは彼女の横顔を映す。画質はイマイチだが表情は読み取れそうだ。  真顔で壁を見ているが、ほんの少し口が動いている。  独り言か歌を口ずさんでいるような感じだ。 「音って拾えますか?」と警備員にお願いする。 「はい。ちょっと待ってください。」  警部員はモニター近くにあるコントローラーを操作した。  ジーッという雑音と一緒に大石光の声らしきものが聞こえる。 「うん、だい…じ…ぶ。」  うん。大丈夫だろうか?あまりよく聴こえない。  なんだろう。すごく切ない気持ちに襲われる。
/286ページ

最初のコメントを投稿しよう!