第2章:冷たい共感力

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 大石光の圧倒的な存在感に気を取られていたが、改めて全身を見る。  服装の指定はないが大石光は制服を着ている。おそらく弁護士からのアドバイスだろう。  そして、その選択は成功したと思われる。  濃紺のジャンバースカートとボレロ型のジャケットに身を包んだ清楚な姿。容疑者というより大人たちに囲まれた悲劇のヒロインのようだ。  制服の真紅の紐タイが唯一身につけている明るい色だが、十分過ぎるくらい華がある。  化粧品のコマーシャルでよく使われる「透明感」という言葉が今までしっくりこなかったが、大石光を見てその意味がわかった。    制服に包まれていない部分から覗く肌は、色白でくすみどころか毛穴も見えないくらい透き通っている。  肉眼では見えない薄い膜が張っているような(つや)がある。  肩まで伸びた黒い髪の毛はサラサラのストレートだ。  時折、取り調べ室に入る日の光が当たりキラキラ輝く。  ゆっくり視線を落とし、顔を恐る恐る確認する。  斜め上からなので見える範囲は限られているが、横顔は凛として気品がある。  長い睫毛は瞳を綺麗に見せるためのアクセントのように上向きに生え、形の良い鼻の下に淡いピンク色の唇がある。  真正面の顔をじっくり見たい。  …明日の取り調べは俺がメインをやろう。  
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