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第1章:廃墟病院の悪魔
「人は見た目で9割が決まる。」
最近読んだ本に書いてあったが、その通りだと思う。
ある心理学者は、人が他人から受け取る情報の割合で「話す言葉の内容」はたった7%で、残りの93%は「顔の表情や声の質」だと発表した。
例えば、警察官に道でなにかを言われ、威圧感を受けるのは制服と話し方のせいである。
どんなに家柄が良く、勉強ができても、人は見た目で判断する。
いつの時代も、男は美人に、女はイケメンに一目惚れする。
要するに「外見の威力」は強大だ。
「ホシの子、すごい美少女らしいぞ。」
署内で男性巡査が嬉しそうに囁く会話を聞き、改めてそう思った。
あんなに厄介者扱いだった、忌まわしき事件の容疑者、通称「廃墟病院の悪魔」。
神奈川県厚木警察署が逮捕後、俺が務める警視庁本部に精神鑑定のために移送されてから、周りの評価は一転した。
容疑者の大石光を署内で見かけた奴らは「悪魔」というネガティブワードを一瞬で払拭する容姿に魅せられたようだ。
確かにすごい美少女だった。それは認める。
だけど15歳だぞ。まだ子供じゃないか。
それにしても、事件を知った時は、まさか自分が彼女の担当になるとは思わなかった。
「脳科学と心理学に知識があって、取り調べに十分に時間を割ける若手と言えば、岩崎くんしかいないだろ。」と警視長から呼び出され任務を与えられた時、そうだなと納得したけど。
取り調べか…。
どちらかといえば、下調べに時間をかけるタイプなんだけど。
部下の柏木巡査部長がまとめたファイルを開き、事件の概要に目を通す。
日本の少年犯罪でもこれは歴史に残るレベルだ、とため息が出た。
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