第2章:冷たい共感力

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 打ち合わせで『冷たい共感力』を説明するため、凶悪犯罪者の脳構造について語ったが、大石光が同じかどうかまだわからない。  もう直ぐクリスマスだ。  世間がウキウキしている時期に、いきなり一人で拘置所で過ごすのは少女には残酷な仕打ちだろう。  昨日、大石光が両親と面談した際に母親は号泣したと聞いた。本人は涙を流さなかったそうだが、母親を見てどう思ったのだろうか。  独房に一人になり、泣くのを我慢するために「うん。大丈夫。」と自分を鼓舞しているのかもしれない。  大石光が諸悪の根源ではなく、ゼウスでもなんでもいいから事件の裏の糸を引いている人物がいてくれ。  心からそう思った。  法律に基づいた罪の重さを検察官が考え、裁判官が最終的な判断を下す。  真実を突き止めるのが俺たち警察の職務だ。  勾留期間ができるだけ短く済むようチーム全員で全力を尽くそう。 「人は見た目で9割が決まる。」  本当その通りだな。  大石光と会ってから、今まで感じた事がない高いモチベーションに驚く。  午後は大石光を検査した医師との面談だ。  きっちり情報を刈り取らなくては。     警備員にお礼を言って拘置所を去った。  あまり腹は減ってないが、購買で甘めのパンでも買って脳に糖分を送りこもう。
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