第2章:冷たい共感力

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第2章:冷たい共感力

 「備えあれば憂いなし。」  取り調べ室に早めに入り、柏木ちゃんと段取りを確認する。  2(俺たち)対1(大石光)のみの接見にみえるが、実はこの取り調べ室は特殊構造で隣部屋から俺たちの様子を監視できるようになっている。  上司にあたる井上警視が、別室で俺たちを見守るのを今朝知らされた。    何で急に……。相当注目されている事件だから?柏木ちゃんの活躍を見たいから?それともその両方?  なーんて雑念に邪魔されないように、隣部屋の存在を大石光に気づかれないよう柏木ちゃんに注意する。 「取り調べ時間は30分。」と指示するが、時間の規定があるわけではない。  大石光の両親は、逮捕後すぐに弁護士をつけた。  裁判で「圧迫の取り調べだった。」と言われないための配慮もあるが、短く効率よくする方がお互いのためだからだ。  段取りが終わった数分後、大石光が2名の巡査員に連れられてきた。  6畳程度の広さしかない取り調べ室に彼女が入った時、一瞬で部屋の空気が変わったのを柏木ちゃんと俺は感じた。
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