道しるべ

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 吉蔵は相模の国に住む大の山登り好き。  年は30で男盛り、体力には自信を持っている。  或る休日も吉蔵は青嵐を心地よく感じながら箱根火山群の岨道を愉快に歩き、乙女峠を越えて中央火口丘と芦ノ湖を遠望できる所までやって来た。  登山者にしか味わえない風光明媚な景色に励まされながら吉蔵は猶も愉快に歩いて行くと、分かれ道に突き当たった。  分かれ目には道標が立ててあって矢印が右の道を指している。  吉蔵は少し迷ったが、道標に従って進むことにした。  ずんずん進むに連れて霧が深くなって来たので、こりゃいかんと吉蔵は思って戻ることにした。
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