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その後、司を見つけ出して今に至る。
「別れるってどういうこと?」
遼が聞くと、司は目を伏せて口をゆっくりと開いた。
「もう、これ以上隠し続けるのが辛くなったからだよ。」
静かな声で言うと、司は自分の胸元に握った右手をそっと添え、俯いた。
「僕、トランスジェンダーなんだ。」
暗く沈んだ声で続ける。それを聞いた遼は瞳を見開く。
「…だから男の一人称なのか。いや、そうじゃないな。別れたい理由がそれ?」
「うん。僕は身体が女だとはいえ、心は男なんだ。君、男と付き合うのは嫌だろ? だから、この関係はもう終わりに――」
「ふざけるなよ!」
哀しく微笑む司の話を遼は怒声で遮った。そんな遼に、司の表情は哀しい微笑みから驚きの表情に変わった。
遼はそんな司の冷えた身体を力強く抱きしめた。
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