十五歳の春 体温がないならいいよと彼女は言った

課題

　彼女を好きになって３ヶ月、告白して３ヶ月、付き合い始めて３ヶ月。つまり僕は、ひとめ惚れを即座に叶えたラッキーボーイというわけだ。

　ところが、彼女には信条があった。いわく、結婚までは男も女も清さを保つべき、である。

　もちろん、惚れた相手の言うことなのだから、そりゃ尊重するさ。けど、と僕は思って彼女に言った。

「抱きしめるくらい、よくない？」

　彼女は言った。

「体温を残さないならね。ひとつの身体に複数の恋の記憶があるなんて、おかしいもの」

　言いきられると、確かにそうかなという気がしてくる。もしも彼女の身体に他のヤツの記憶なんか刻まれていたら、僕は神を恨むだろう。

　僕らはまだお互い１５歳で、結婚できる年齢に達していない。

　よって僕は考えなくてはならない。
　体温を残さずに抱きしめる方法を。

　…………そんな方法、あんのかよ。