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第一のチャンス
夏が来て、水泳の授業が始まった。
一定の水温になっているのを確認の上で行われるとはいえ、三十分もたった頃には、ほとんどのやつの唇が紫色になっていた。先生が、笛を吹いた。
「おーし、みんな上がれー。プールサイドで甲羅干ししろー」
ありがたい! そう思ったのは僕だけじゃなく、その証拠に、みな我先にと上がり出した。
初夏の日差しを浴びたとき、僕はお日さまに感謝した。なんてぬくいんだ!
が、そのとき、僕はハッとした。これは、ザ・チャンスではないのか!
僕はいったん温まりかけた身体をまた冷たいプールにおどらせて、反対側で行われている女子の授業に割り込みにいった。
「美摘!」と彼女の名前を呼び、ふり返った彼女のところにザバザバと水を掻き分けていく。
「今、僕の体温は、少なくとも表面にはないも同然だ! 抱きしめてもいいか!?」
きゃー、なにそれー
やばーい!
他の女子が騒ぎ出し、男子側のプールサイドからもヒューヒュー🎵と、冷やかしの口笛が飛んだ。
美摘は顔を赤らめながら、「いま、授業中だから」と言った。
「だよねー」
ガックリと肩を落とした僕は、女子担当の体育教師によって追い払われた。
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