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けたたましく鳴り響いたアラームに起こされた真陽(まひる)は、昨夜飲んだ眠剤が抜けなくてもぞもぞと起き出してはぽけーっとしていた。
「真陽、弁当と水筒!あと俺の朝メシ!」
これまた朝から騒々しいのは、夫の圭介(けいすけ)だ。
「そのくらい自分でやってよ」
気だるそうにベッドから降りながら、真陽は少しうんざりしながら言った。
「ママ、おはよー」
子供達が降りてきた。
子供達と言ってももう成人して、各々働いている。
子供に手が掛かる時期は過ぎたのだ。
でもその分圭介に前にも増して手が掛かる様になった気がするのは何故だろう。
圭介と結婚して20数年。
もうそろそろ銀婚式になるんだな。
圭介と真陽が今一番欲しいものは赤ちゃんであって、真陽が産めないのだから当然娘に産んでもらうしかない。
「ねぇ、お姉ちゃん。産むだけでいいからさ、こっちで育てるから産んでよ」
些かむちゃくちゃな言い分である。
「できちゃったら産むけど…」
「大丈夫、ちゃんと育てるから」
「でも、ママ達子育て失敗してるじゃん」
あー…、それ言うかな?
でもその失敗作が娘よお前の事だということに気付いているのか?
長女の春菜(はるな)は、未だにまともに掃除も出来ない。
でもそれは母である真陽の血を濃く受け継いでしまったからであって、春菜のせいではないのだけれど。
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