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すると、まるでそれが聞こえたかのように、一号と三号に挟まれた二号が大きな声で言いました。
「おれはとっとと出てくぜ、こんなとこ。
ずーっと遠くの、ほのかちゃんもおまえらも知らない世界で、思いっきり爪痕残してやる」
勝算はある、と二号は思っていました。
なぜなら自分と兄弟たちは、そこらの百円ショップで売られているような芸のない四角い付箋とは違う、猫の形をしたかわいい付箋なのだから、と。
威勢のいい二号の言葉に、皆がほうっとため息をついた、その瞬間。
「ねえほのかー。付箋1枚ちょうだい」
ノックもなく部屋のドアが開くと、ほのかちゃんのお母さんが顔を出しました。
時刻は夜の10時を過ぎたところ。お母さんはいつものように、持ち帰った仕事をダイニングテーブルで片づけているのでしょう。
お風呂上がりでしょうか、ヘアターバンで前髪を上げた眉毛のないその顔は、蛍光灯の光の下で見ると少々怖い。
……これは、非常に危険な兆候です。
付箋たちは、一気に青ざめました。
とはいえ、それは兄弟同士にしかわからない程度の変化にすぎず、傍目にはそれまでとまったく同じ、ピンク地に白の水玉模様のままでしたが。
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