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適度な距離感――それは、見過ごされがちな点ではありますが、およそなにごとにおいても、非常に大切なことといえるでしょう。
かねてより、付箋たちは不満を感じていました。
なにしろ、近すぎるのです。
彼らの暮らす、女子高生ほのかちゃんのペンケース。
ころんとした形のそれは、標準的なサイズではありますが、様々な色や機能を持つペンや、シャープペンシルに消しゴム、定規に加え、修正テープやテープのりに、携帯用のスティックタイプのはさみまで入って、なかなかの混雑具合。おまけに、付箋という製造物の悲しさで、兄弟同士がこれまたぴったりと密着しています。
「うわ、ありえねー。おれら、ポケットティッシュさんたちより密着してんじゃん」
「ティッシュと違って、二人一組じゃなくて兄弟全員一組だし」
「密着っていえばステープラーの芯さんたちもがっちり固まってるけど、ひっついてる面積はこっちの方が広いよね」
「てか、ほぼ接着面しかねーわ、おれら。先頭の顔と最後尾の背中以外」
そうそう。言い忘れましたが、ほのかちゃんのペンケースには、小型のステープラーまで入っているのでした。
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