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「オッ、オガワ様。漢字を教えていただけますか。」
「ちいさいに、さんずいのカワ、花のサクラです。」
小河 桜。
漢字も一緒だ!!
本人なのか!?
マニュアル通り住所も尋ねていくと、通っていた高校がある町に住んでいることがわかり、心拍数が上がる。
偶然なのか、建物名がさくらコーポで、下の名前と同じなのも気になった。
支払い方法や配達日時の確認に進んでいくが、声だけではやはり、俺の知る小河 桜なのか、特定は難しい。
後ろでは社員が巡回し、俺達バイトを監視しているので、こちらからは尋ねられない。
返品条件の案内も終わり、ついにクローズだ。
「本日は、快適TVショッピングをご利用くださり、誠にありがとうございました。
私、サトウが承りました。」
もし、俺の知っている彼女なら、気づいてくれるのではないかと、自分の名前を強調して言ってみたが、「ありがとうございます。」とだけ返ってきた。
複数の同姓がいるため、どのサトウのミスだか曖昧になりやすいこの名字を気に入っていたが、初めて疎ましく思えた。
電話が切られると思った瞬間、
「おっ、小河様・・・何かご不明な点はございませんか?」
初めて、マニュアル以外の言葉を発してしまった。
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