33歳の初恋

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 子供に夕凪先生の結婚を知らされてから、1週間後、昼休みに校長室に呼び出された。 なんだろう? 特に問題も起きてないし、思い当たることもない。 疑問に思いながらも、私は校長室を訪ねた。 「失礼します」 「ああ、松井先生。  どうぞ、お掛けください」 校長に促されて、会議用の楕円形のテーブルの片隅に座る。 校長は、ドアをしっかりと閉めてから私の斜め前に座った。 「松井先生は、神山(こうやま)先生がご結婚なさるのは、  ご存知ですか?」 え? そのこと? まさか学校を休んで新婚旅行にでも行くの? 神山先生というのは、神山夕凪先生のこと。 「はい。ご本人からは伺ってませんが、  子供たちが噂をしてるのは聞きました」 「そうなんですよ。  どこからか子供たちにバレてしまった  ようで、保護者から結婚式に参列したいと  問い合わせがあったんです」 「???  それなら、夕凪先生に直接聞けば  いいんじゃないですか?」 なんで私? 「いえ、それが、2年3組の子供たちで歌を  歌いたいとのことなんです。  だったら、サプライズにできないかと  思いまして、松井先生にご助力  願えないかなとお越しいただいた次第  なんです」 歌のサプライズプレゼント!? 「楽しそうですね‼︎」 「でしょ?  で、神山先生の前任校に問い合わせたら、  あちらでも、同じようにサプライズで  歌うことを考えているようなので、  あちらの担当の先生と相談して計画して  いただけないかなと思いまして」 「はぁ…  でも、普通、現在の教え子が歌うって  言ったら、前の教え子は遠慮するものじゃ  ありません?」 まぁ、あくまで一般的に…というだけの話だけど。 「それなんですが、実は、神山先生の  お相手がそのクラスの子のお父さん  なんですよ。  つまり、神山先生の息子さんになる子と  その元クラスメイトなので、どちらかと  言うと、遠慮すべきはこちらの方で… 」 「え!?」 それって、保護者と関係を持ったってこと? それ、あとでバッシングがくるパターンじゃ… 「あ、誤解しないでくださいね。  お付き合いを始めたのは、担任を外れた後  だそうですよ。  神山先生は真面目な方ですから」 「はぁ」 それでも…… 私は、疑念を持ったが、口にするのは辞めた。 言ってどうにかなるものじゃない。 私は、校長から先方の小学校の担当者の名前を聞いて、校長室を後にした。
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