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21話/嘘に込められた1割の真実
「くそっ! 言い逃げかよ」
シュバルツの言い方に腹を立てたのは、リョーイチも同じだった。詳細は分からないにしても、雄がまんまとシュバルツの策略にはまったことで。問題を解決するためには、雄がシュバルツを殺さなきゃならなくなった事ぐらいは理解出来た。
「どうするんですか?」
「なんで殺し合わなきゃならないの?」
質問したい気持ちは分かるが、仲間を殺す決断を迫られた雄は、周囲に八つ当たりしないよう気を遣うのが精一杯でーー。
「ジーク君、コヅキちゃん」
間合いに入ったムグルは、質問した二人の勢いを削ぎ落とすように両手を上げると、どうどうと言わん張りに動かして待って欲しい旨をアピールした。
するとキョウはライフルを背負い直し、声量を落として「部屋の外で待つ」と告げると、リョーイチもそれに習って部屋を出た。
一番困惑しているのは、名指しで宣戦布告された雄のはずである。感情任せに言い返したところからして、仲間であるシュバルツと殺し合いなんてしたくないはずだ。
その後、コヅキとジークも部屋から離れ。暫くして深い溜め息を吐いた雄は、何も言わずに待っていたムグルに指示を出す。
「とりあえず、出来る事から始めますか」
「そうだね」
「事情説明したいから、隣の部屋に移って」
思うところは色々あるだろうに……。
部屋から出た雄は、2階の通路で各々待っていたリョーイチ達に声をかけると、向かって左手側。ムグルがリョーイチ達を連れて降りて来る直前までいた部屋に移動すると、明かりを付けて話し合いの場を設ける準備を始めた。
「雄さん……。雄さんは、シュバルツさんを殺るつもりですか?」
口調は丁寧だが、仕事に関わる資料庫を兼ねたミーティング室に呼ばれたからだろう。
マジックボードに読めない字で書かれた面を引っくり返す前に、張り付けていた地図を再利用しようと準備する雄にジークが尋ねた。
すると雄は、手を動かしながら「いや」と否定して、自分なりに考えた事を口にする。
「それはシュバルツが出した結論で、俺はそこまで考えてないよ。言動からして、協力者がいる前提で用意された映像じゃなさそうだし、情報がどこまで正しいのか。調べてみる価値はあると思うんだよね」
「それで無闇に突っ込むなと言わないのか」
この場にヒビキがいたら、絶対門前払いを受けると思ったキョウは、雄の判断基準に納得した。彼は土地勘がないばかりか、現地で入手した情報の善し悪しの判断が出来ない。
そこで今最も信頼出来るリョーイチ達の力を借りることで、仕事の効率をあげ、最短で問題を解決するつもりのようだ。
「ついでに言うと、仕事とは別に頼まれ事があるから、単純に仕事をこなすだけじゃ済まない話になってるんだよ」
「という事は、ヒビキのオッサンの望みも叶えるつもりでいんのか?」
「当たり前だろ。俺も一発ぶん殴りたいし、そのための戦力として、リョーイチの話に乗ったんだから」
「それじゃあ今のところ、雄ちゃんの予想通りってこと?」
「8割方ね。さすがに宣戦布告を受けるとは、思いもよらなかったけど……」
リョーイチの質問に続いて、コヅキの質問に答えは雄は、先が思いやられるとばかりに失笑するものの。思い出したように「あ!」と声を上げて、本題に切り替える。
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