21話/嘘に込められた1割の真実

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「さすがにお問い合わせして、ヒビキさんに見せてもらった資料を貰うことなんて出来ないよね?」 「えぇ、それはさすがに……」  当然のことだが、見せてもらった資料は軍が管理している代物。おいそれと拝見出来るものでなければ、コピーして外部に見せることも出来ないのが普通である。 「しまったな~。犯人の居場所を特定するためにも、現場となった住所を知りたいんだけど……」 「住所だけでいいんですか? それなら、覚えてますよ」 「マジで!?」  記憶力が良いジークは、写真が必要という訳でないならと、マジックボートに張り出された地図の前までやってきた。 「じゃあ土地勘の無い俺でも分かるように、現場となった場所に丸印してくれないかな? 大体のところで構わないんだけどさ」 「分かりました」  遠慮がちに雄がリクエストすると、事前に用意された黒いマジックペンを受け取ったジークは、覚えていることを地図に照らし合わせてから確認する。 「バツ印と被っても大丈夫ですか?」 「平気」 「丸かぶりの所もありますね」  張り出されていた地図には、幾つもの赤いバツ印が書かれていたが、雄の指示でジークが上書きしていくと、赤いバツ印と交わる黒い丸印とは別に単独印が浮かび上がる。 「続いて、日付を加えてくれないかな?」 「日付ですか?」  マジックペンでは太すぎるからと、黒いボールペンをジークに差し出した雄は、赤いボールペンをスタンバイして。ジークが書き終わったのを見計らって、黒いスケジュール帳を横目で見ながら書き足していく。 「出来たぞ。まずは単独の、黒丸印の犯人をぶっ潰す!」 「その心は?」 「犯人の手口も正体も分かってるからだよ。それにサンシャインシティにいたから、条件さえ揃えば捕まえる事も出来るはずだよ」 「彼奴(アイツ)か!?」  此処で何を言ってるのか理解したリョーイチは、雄が必死になって追い回していた奴の事を思い出した。 「それじゃあ印がタブってるのは?」 「多分シュバルツの本命だよ。だからヒビキさんにしたんだ」 「__犯人を知ってるからこその忠告か」  ジークの質問に雄が答えると、謎めいたシュバルツの発言から意図を汲んだキョウが呟いた。どうやらヒビキよりシュバルツの方が、一枚上手の実力者のようである。  横取りの忠告に見せかけて、犯人を知っているからこそ。ヒビキに深入りしないよう、注意を促したのだろう。 「だけどヒビキさんは、犯人に目星が付いてなかった。もしくは、目星が付いても引くに退けない相手だったんだろうね」 「後者の可能性を考えると、化物(ポーン)か」 「だとしても、まずは余計な噂を無くす方が先決だよ」  ムグルの見解から犯人の正体を割り出したリョーイチだか、雄はぴゃりと断りを入れて目的を言った。そして、改めて地図に注目してもらおうと、雄がマジックボードを右手の甲で叩いてから理由を述べる。 「あのパーカー(ヤロー)の所為で、軍の人手が分散してるから。本命が大物だと、周囲に被害が及んで全滅しかねない。だから最初にパーカー(ヤロー)を捕まえて、軍が必要な箇所に、必要な人手が回るよう手助けしてから本命を狙いに行く」 「だけど時間が限られてないか?」 「そう言やアイツ、絶望のの始まりだ。とか言ってたな」  キョウの突っ込みから、シュバルツの発言を思い出すリョーイチ。雄としては、気にしてほしくなかった点だが__。後になって言うよりはと考え直した雄は、深刻な表情で発言する。
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