23話/仕向けられた交渉

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{おはよう、雄ちゃん} 「おはようございます」 {ジークから聞いたよ。中間報告、しないつもりだったんだって?} 「いや、あの……。経過報告は、ジークさんが豆に連絡してますよね?」 {それとこれとは別問題だよ、雄ちゃん}  声色は優しいけど、ちょっとばかり怒っているのは分かる雄は、苦笑いを溢して「ですよねぇ」と同意した。でなければ、雄も交渉のネタに使わない。 {初日から凄い成果だね} 「でもヒビキさんが俺に求めてるのは、ですよね? それ以上の情報は有料ですよ」  つまり結果に至るまでの経緯報告は、あくまでジークの仕事で。今の報酬では教えられないと言うのだ。 {雄ちゃん、人が悪いね~} 「ちょっと協力してほしいことがあって」 {あっ。巡回のことなら、邪魔にならないよう配慮しといたよ} 「有難うございます。それと偵察機がありませんか? 論より証拠、撮影出来るタイプが望ましいんですけど」  __と、此処で雄はソファーから立ち上がって。落ち着かない様子でホールを歩き回りながらヒビキと何やら相談し始め。相手に無理な願いはしないよう、ヒビキが渋い反応を見せれば、折り合いが付きそうな提案を出して交渉成立。更に損した気分にさせないよう、雄は最低限の情報をヒビキに提供する。 「最後にシュバルツは生きてるだけで、健康状態はおもわしくありません。結果は、あくまで俺達次第になると思います」 {分かった。やむを得ず化物(ポーン)を攻撃した場合、戦闘は大通りで頼むよ} 「援護してくれるんですか?」  最近群れて出現することを知った雄は、リョーイチ達の身の安全を考えて尋ねるだけ尋ねてみると、スマートフォン越しに口角をあげたヒビキは{ポイントまで引き込んでくれるならいいよ}と答えた。 「意地悪ですね」 {肝心なことは(だんま)りの雄ちゃんに言われたくないよ。本当に狙いは、シティーで追いかけ回してたパーカー野郎だけかい?} 「念のためですよ。受けたんで」  するとヒビキは、{あー、なるほどね}と軽い口調で相槌した後に忠告する。 {雄ちゃん、2頭追うものは1頭も得ずってことわざ。知ってるかい?} 「それは狩人が独りだった場合ですよね? だからシュバルツは狙いを絞った」  でもその結果、シュバルツは惨敗。  ヒビキも成果が出ないまま、犠牲者が出ている状況が続いているのが現状だ。 {なるほどね} 「俺の場合、禁じ手なので。連絡はこのまま、ジークさんが仲介だと有難いです」 {分かった。配慮しよう} 「それじゃ、後はお互いの引き強さに任せると言うことで。ジークさんに代わりますね」  何とか希望が叶った雄は、ご満悦の様子でジークにスマートフォンを返すと、キョウの下に駆け寄って「終わった」と告げた。 「随分注文をつけてたな」 「シュバルツは、有言実行派だからね」 「海老を釣って、鯛でも釣る気か?」 「そこまで上手くはいかないと思うけど、死人が出ないといいね」  突然物騒な事を言われ、ぎょっとした反応を見せるキョウだが……。ふとシュバルツのメッセージを思い出し、パーカー野郎を口実にヒビキの権力を借りて。本命の実力を測る のでは? と考えた。 「勝てると思うか?」 「ん~……。良くて痛み分けかもね」  シュバルツが、この世界の技術ではなく。  発動しにきい魔法を使用している事から、雄はそれとなく注意を促すように答えた。
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