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{おはよう、雄ちゃん}
「おはようございます」
{ジークから聞いたよ。中間報告、しないつもりだったんだって?}
「いや、あの……。経過報告は、ジークさんが豆に連絡してますよね?」
{それとこれとは別問題だよ、雄ちゃん}
声色は優しいけど、ちょっとばかり怒っているのは分かる雄は、苦笑いを溢して「ですよねぇ」と同意した。でなければ、雄も交渉のネタに使わない。
{初日から凄い成果だね}
「でもヒビキさんが俺に求めてるのは、結果ですよね? それ以上の情報は有料ですよ」
つまり結果に至るまでの経緯報告は、あくまでジークの仕事で。今の報酬では教えられないと言うのだ。
{雄ちゃん、人が悪いね~}
「ちょっと協力してほしいことがあって」
{あっ。巡回のことなら、邪魔にならないよう配慮しといたよ}
「有難うございます。それと偵察機がありませんか? 論より証拠、撮影出来るタイプが望ましいんですけど」
__と、此処で雄はソファーから立ち上がって。落ち着かない様子でホールを歩き回りながらヒビキと何やら相談し始め。相手に無理な願いはしないよう、ヒビキが渋い反応を見せれば、折り合いが付きそうな提案を出して交渉成立。更に損した気分にさせないよう、雄は最低限の情報をヒビキに提供する。
「最後にシュバルツは生きてるだけで、健康状態はおもわしくありません。結果は、あくまで俺達次第になると思います」
{分かった。やむを得ず化物を攻撃した場合、戦闘は大通りで頼むよ}
「援護してくれるんですか?」
最近群れて出現することを知った雄は、リョーイチ達の身の安全を考えて尋ねるだけ尋ねてみると、スマートフォン越しに口角をあげたヒビキは{ポイントまで引き込んでくれるならいいよ}と答えた。
「意地悪ですね」
{肝心なことは黙りの雄ちゃんに言われたくないよ。本当に狙いは、シティーで追いかけ回してたパーカー野郎だけかい?}
「念のためですよ。宣戦布告受けたんで」
するとヒビキは、{あー、なるほどね}と軽い口調で相槌した後に忠告する。
{雄ちゃん、2頭追うものは1頭も得ずってことわざ。知ってるかい?}
「それは狩人が独りだった場合ですよね? だからシュバルツは狙いを絞った」
でもその結果、シュバルツは惨敗。
ヒビキも成果が出ないまま、犠牲者が出ている状況が続いているのが現状だ。
{なるほどね}
「俺の場合、禁じ手なので。連絡はこのまま、ジークさんが仲介だと有難いです」
{分かった。配慮しよう}
「それじゃ、後はお互いの引き強さに任せると言うことで。ジークさんに代わりますね」
何とか希望が叶った雄は、ご満悦の様子でジークにスマートフォンを返すと、キョウの下に駆け寄って「終わった」と告げた。
「随分注文をつけてたな」
「シュバルツは、有言実行派だからね」
「海老を釣って、鯛でも釣る気か?」
「そこまで上手くはいかないと思うけど、死人が出ないといいね」
突然物騒な事を言われ、ぎょっとした反応を見せるキョウだが……。ふとシュバルツのメッセージを思い出し、パーカー野郎を口実にヒビキの権力を借りて。本命の実力を測る
のでは? と考えた。
「勝てると思うか?」
「ん~……。良くて痛み分けかもね」
シュバルツが、この世界の技術ではなく。
発動しにきい魔法を使用している事から、雄はそれとなく注意を促すように答えた。
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