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「ヒビキさん。さすがに要件を飲み過ぎではありませんか?」
私用の領域を越えていることを勧告するのは、何時だって頭が硬いジーク役目だ。
でも柔軟な思考で様々な難題をクリアしてきたヒビキにとって、雄の提案は合理的で言い訳が成り立つ願ってもない申し出だった。
{そうか? 安い報酬で俺ら軍人の仕事を肩代わりしてくれるんだ。これぐらいやってやらないと、割りに合わないだろ?}
「仕事って」
{パーカー野郎を捕まえに行くんだろ? アイツ等にとって、寄り道も良いところだ。それによぉく考えてみろ。これはチャンスだ}
「チャンス?」
{雄ちゃんは言ったろ? 結果以外は有料だって。もしアイツ等が二手に別れたらどうする? イヌカイを撒いた二人だぞ? ココは協力してる振りして、有力な情報を得る方が得策ってヤツだ。それにシュバルツは、雄ちゃんに宣戦布告したんだろ? 何かしら意図があるはずだ。気を付けろよ}
「まぁやると言ったら、やる人ですからね」
神出鬼没で、ジークの背後を簡単にとってしまう程の実力があるシュバルツ。ヒビキお墨付きの謎が多い男だが、その実行力の高さと成功率はよく知っていた。
{それを雄ちゃんは、バッチリ撮影しろって言ってんだよ。それも何時何処で何があっても迷惑にならないよう、無人偵察ご希望だ。後はお前らをどう逃がすか、土地勘無いなりに考えてるんだろうよ}
「それじゃあ、雄さんは独りで決着を?」
{いんや、出来る限り巻き込みたくないだけだろ。東京には化物がいる}
「そう、ですね」
つまり目標が見つかっても、邪魔が入る可能性が高い戦場と言うことだ。
{身を引くタイミングを誤るなよ}
「分かりました。配置の詳細が決まったら、キョウにも教えといて下さい。二手に別れる事になったら、恐らく僕はムグルさんに付く事になると思いますので」
{分かった。気を付けて仕事しろよ}
「はい、それではまた」
キリの良いタイミングで話を切ると、ジークは通話終了のアイコンを押してから、肩の力を抜くように大きく息を吐いた。
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