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ーーそれから1時間後。
仮眠を終えたムグルが角部屋から出ると、隣接した部屋から顔を出して、大欠伸しながらリョーイチも起床。コヅキも眠たい眼をこすりながらも、別部屋から姿を現した。
「予定通り出発できそうですね」
「雄、お前。何時起きたんだよ」
「二時間前」
「ビックリだよね~」
ジークの発動の後、リョーイチがすでに起きている雄に向かって質問したので。雄の答えに合わせて、からかうように言うムグル。
けど彼は、雄が元からヒビキと交渉するために、記録が残るLINEで報告を寄せた事に気付いていた。
「お陰で三文の得をしたよ」
「ヒビキさんと連絡がとれたんだね。おめでとう」
「ありがとう♪」
一見何てことのないやり取りに、スルーしてしまいそうになるが、その切っ掛けを作ったジークからすると、聞き捨てならない会話にギョッとした反応を見せる。
「ど、どう言う事ですか? ムグルさん」
「君はまんまと雄の作戦に乗っただけだよ」
「乗ったって__」
「ジークさん、随分豆に報告を入れてる様子だったから。不確かな情報を流せば、確認のためヒビキさんから電話がもらえるんじゃないかと思って。見張りをしてるムグル宛に、わざと記録が残るLINEで報告したんだよ」
「ボクは、記録が残るLINEで報告がきたから。教えて構わない情報だと思って、言っただけだけどね」
雄は申し訳ない思いつつ、まさかここまで上手く行くとは思ってなかったので。ちょっと嬉しそうに暴露すると、その作戦に荷担したムグルは、矛先回避のため言い訳。
するとジークは、ジト目でムグルを睨みつけ。そこに朝食を持ってきたキョウが、テーブルに料理を広げながら言う。
「よく人の動向を観察してるな」
「でなきゃ知らない土地でやってけないよ」
「それに利用出来るモノは利用しないと、死人が出そうな仕事だからね」
「ムグルもそう思うのか」
彼が不在の時、似たようなことを雄も言ってたので、キョウは胸騒ぎから尋ねた。
するとムグルは、「確証は無いけどね」と前置きしてから言葉を返す。
「嫌な予感がするんだよ。助けに来た仲間に宣戦布告なんて。違和感しかないからね」
「確かに」
「何か矛盾してますね」
ムグルの言い分に納得したコヅキに続いて、ジークも言われてみればと首を傾げる。
時間稼ぎをしているのなら、普通〈今の内に本体を討て!〉と言うところなのに……。あれでは、自分が黒幕だと言っているような発言だ。
そこで化物を知るキョウが、ふとした瞬間思い出した情報から(まさか)と思ったものの。確信が持てず、発言しないまま思考を巡らせる。
あの化物の中には、食したモノの姿を借りて捕食する。進化物が存在するのだ。
けど余り考え事を好まないリョーイチは、昨日と同じ席に座ると、負けん気が強そうな態度で発言する。
「まぁとにかく、何とかする他ねぇんだろ? 飯食って早く準備しようぜ。キョウはハンドガン持ってきたのかよ」
「一応な」
尤も彼は、援護射撃がメインのため。リョーイチが愛用してる獲物に比べて、小型で命中率重視のコルトパイソン4インチモデル/装弾数6発。予備弾数スピードローダー入りを3つ準備はしてたが、サブメインの獲物故に長期戦向きではない。
それでもパーカー野郎を追いかけながら、化物とやり合う可能性を視野に入れたリョーイチは言う。
「今度の鬼ごっこはハードになるだろうぜ」
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