24話/追い詰められた末路

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「あんな奴を生捕りにするのか?」 「人殺しは専門外なだけだよ。東京のルールなんてよく分かんないし、よそ者が余計な事して騒がれるのも面倒なだけじゃないの?」 「それは言えてるな」  しかし、現実は時に非情な結末を寄越すもので__。前方を走る犯人が、いつも調子で目に入った通行人に助けを求めた時だ。 「すみません! 助けて下さい!!」  犯人は、近隣に進化物(ナイト)がいるとは知らなかった。それに追われてる身でもあったことから、助けを求めた相手の異常に気付くことなく近付いた。  一方、犯人を捕まえる一心だったリョーイチが進化物(ナイト)に気付いたのは、犯人の呼び掛けに反応した相手の顔を見た瞬間である。 「そいつから離れろ!!」  動かないはずの表情筋が、一瞬笑ったように見えたのは錯覚だ。人間(ヒト)の皮を被った進化物(ナイト)は、リョーイチの呼び止めに勝ち誇った笑みを浮かべた犯人を丸飲みにすると、ぽってりとした()くよかな体型となる。 「ちっ!」  リョーイチは、犯人の呆気ない最期に舌打ちするしかなかった。なんせ化物(ポーン)進化物(ナイト)に捕食された獲物は、骨すら残らず秒で消化されるため。丸のみにされると、どうしようもない事を知っている。  しかし、そこへ駆け付けた雄はーー 「退避!!」  呆気ない犯人の最期に衝撃を受けながらも、指示を出した後に膨張した進化物(ナイト)の仮面を見事一発で撃ち砕いた。 「食べ残し設定無しか」  捕食で膨大した身体が一気に液体と化した事で、化物(ポーン)の数が予想を遥かに越える数となってしまったものの。進化物(ナイト)の仕留め方としては、尤も一般的(ポピュラー)な手段をとった。人型の姿をとられると、普通の人は躊躇してしまうからだ。 「ポイントにぞ」  手に負えない数の化物(ポーン)を前にして(きびす)を返したキョウは、ハンドガンを手に退路の確保を優先。そんな相方に珍しくリョーイチが「撃ち過ぎんなよ」と忠告するが、時間が経つに連れてそうも言っていられない状況になってくる。 「ムグル」 『もうすぐだよ』  雄がヘッドマイクで呼び掛けると、その応えに見事なタイミングで体現してみせたのは、日本刀を愛用するジークだ。  弾切れを起こしたキョウの守備にまわると、追撃をコヅキに譲ることで、伸縮自在の薙刀から繰り出される一撃により間合いを作り。仕上げとばかりに、退路を阻む化物(ポーン)を次々と二挺拳銃でムグルが仕留めた。 「お待たせ♪」 「カッコつけてる場合かよ!」  しかし、ケチをつけるリョーイチを余所にジークとコヅキが見事なコンビネーションで退路を確保する。 「随分と手際がいいな」 「フレム君が当たりクジ引くことを見越して、ボク達は行動してたからね」 「何だよ、それ」  キョウの疑問にムグルが答えると、不機嫌な様子で悪態を吐くリョーイチ。  大体雄から何の説明もなく見回りを__ 「気を付けてね、て言っといたはずだけど?」  思いっきしフラグ🚩をムグルから貰い受けていた事を思い出したリョーイチは、ぐうの音も出ないとばかりに退路を黙って走り始めた。 「確信してたのか?」 「長い付き合いだからこその作戦だからね。キョウ君は、ポイントに着き次第フォローに回ってね」  そう言ってムグルが軽く前方を指差した方向には、武装したイヌカイが立っていた。 「頭数減らすまで出てくんなよ!」  ビルとビルの間を走る二車線の道路を通り過ぎ、手榴弾片手に部下を従えたイヌカイの横を通り過ぎ様に忠告を受けた一行は、少し離れたビルの出入口の前でタカギと合流。  建物内に身を隠すと、地響きと共に大きな爆発音が鳴り響き。爆風で軋む玄関ホームの窓ガラスから離れて、上の階を目指した。  
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