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「おっしゃ!」
「割れたか?」
明らかに弾丸ではない何かで、雄が致命的な一撃を食らわせたのは分かったものの。リョーイチのガッツポーズとは裏腹に、キョウの疑問に答えるかの如く覆っていた両手を仮面から離した相手は、欠けた左手側から覗く人の顔を晒した。
「シュバルツさん!?」
驚きの余り攻撃を緩めてしまったジークが、危うく化物の餌食になるところをムグルが銃撃で食い止め。その間に仮面を修復した相手は、再び雄と対峙した。
するとシュバルツが言わんとする意味を理解した雄は、リボルバーのハンマーを起こして、氷結弾による捕縛を試みたものの。狙いは良くても引き上げる要領で後退し、ビル影に溶け込んで行った。
「殺る気を無くしたのかよ」
残された化物を始末し終えたリョーイチが銃口を下げた雄に尋ねると、困った様子で「まぁね」と曖昧な返答をした後、一台のドローンが飛ぶ空を見上げて言葉を続ける。
「ちょっと厄介な事になりそうだけど」
「厄介?」
「もしリョーイチにとって親友だった人が、突然無差別殺人鬼になったらどうする?」
それは紛れもなく、ドローンから様子を伺っているであろう。ヒビキが直面した問題だと気付いたリョーイチは、返答に困った。
きっと殺さなければならないのが現実で、誰かに殺されてしまうから殺すのではなく。これ以上罪を重ねて欲しくないからと、訳あって銃口を向ける判断が正しいとは思う。
「オマエはどうすんだよ」
「ん~……。多分手段が有るか無いかによるかな? 俺はまだ諦めてないから」
つまり雄としては、まだ助ける手段があるからシュバルツを助ける気でいるようだ。
化物や進化物の性質を知る現地の者なら、考えられない判断である。
実際、改めて軍と共にサンシャイン・シティまで引き上げた雄にヒビキから言い渡された結論は「手を引いてほしい」の一言であった。
そこで雄は、敢えて理由を聞かず……。
代わりに一晩無償でホテルに泊めると言われたので。その言葉を受け取った雄は、今日付けでヒビキから受けた仕事を失った。
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