26話/駆け引き

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▽▼▽▼▽▼ 「報告します! あれだけいた化物(ポーン)が、見当たらなくなりました」 「はぁ?」  現地で指揮をしていたヒビキが、部下の報告を聞いて耳を疑ったのは言う間でもない。  視界が悪くなったら不利だからと、本降りになる前に一時休戦したものの。周囲には、狩りきれなかった化物(ポーン)が彷徨っていたというのに__。  確認のため、まず建物内から戦場を視察。  まだ雨が降っていたが、視界を奪う程ではない。試しに外に出てみたところ、先程まで殺伐としていた戦場が雨水で綺麗さっぱり洗い流されたように何もいなかった。 「生存者を確認しろ、動けるものは負傷者の手当てに回れ!」 「はっ!」  突然の変化に不思議な気持ちに陥りながらも、ヒビキは部下に命令を下して、陣形の建て直しに取り掛かり。傍に控えてたジークに、リョーイチとキョウの安否を確認するよう頼んだところ。ものの数秒で答えが返ってきて拍子抜けする。 「リョーイチとキョウは、新宿駅の駐屯所で雨宿りがてら買出ししてるようですよ。今日の夕食は煮込みラーメンだそうです」 「平和だな、おい」  それとも此方はようやく煙草が吸える状況になったというのに、そっちは平和そうで何よりだと喜ぶべきかと、ヒビキは煙草をふかしながら思った。 「それでも昨日、今日と化物(ポーン)狩りをしたそうですよ」 「キョウとリョーイチだけでか?」 「いえ。雄さんとムグルさんが御一緒のようですけども」 「コヅキは?」 「彼女は池袋に留まっているようです」  そこで顎に手を当て、考え始めるヒビキ。  今回の群れに本命らしき姿がなかった。  リョーイチやキョウも二日間続けて化物(ポーン)狩りをしたのに、当たりは出ていないようだが……。  随分悠長な様子とは裏腹に、コヅキを現場から引き離しているようにしか思えなかったヒビキは、己の直感を信じてみる事にする。 「一晩様子を見て、化物(ポーン)が確認出来なければシティに引き上げる。ジークはコヅキの居所を掴んどけよ」 「分かりました」  けどジーク自身、今回純粋に仕えてる訳ではないので。命令を遂行する前に、LINEでキョウとリョーイチに連絡を入れる。  ーーバレたようですーー △▲△▲△▲
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