7人が本棚に入れています
本棚に追加
▽▼▽▼▽▼
「あっー! 嘘でしょ?!」
「これで確信を得ましたね」
ムスッと頬を膨らませたコヅキの横から、様子を伺っていたジークが冷静に結論を突き付けた。大体元からリョーイチとキョウは、コヅキを傷付けられるのが嫌いで。普段から極力戦闘に加えないよう心がけている。
だけど当の本人は、仲間外れにされているような気がして嫌みたいだ。
「どうしよ~、ジークぅ😭」
「えっ、と……」
「どうしよ、どうしよ、どうしよ! ねぇ、どうしたら良いと思う? ジークぅ💦」
「お、落ち着いて下さい。痛いですよ」
「ぐすん(ノ_・、)」
動揺の余り、ジークの肩を前後に揺さぶったコヅキは、ひとまず潤んだ瞳をぬぐって落ち着いて見せた。恐らくGPSまでOFFられるのは、今回が初めてなのだろう。
「ひとまずヒビキさんに相談してみるのはどうでしょうか?」
「ヒビキさんに?」
「はい。ヒビキさんなら伝があるかもしれません」
でも、コヅキは複雑な表情を浮かべた。
リョーイチとキョウが理由もなく除け者にするはずがない事ぐらいは、言われなくても分かっているからである。
「気が進みませんか?」
「ううん。ただヒビキさんに頼るってことは、内緒にしてきた事も言わなきゃなんないだろうから……」
「でも大抵のことは筒抜けですよ。ボク自身二重スパイのような存在ですからね」
ところがヒビキ自身、最悪GPS機能があると思ってただけに、それが頼りにならない事を知るや否や頭を抱えてしまった。
「どうしたもんかなぁ……」
見事な蜥蜴の尻尾切りに合うと思いもしなかったのは、今までの経験からだ。ヒビキもコヅキと同じように、最悪GPSで位置情報を得ていたのである。
「なんか言ってなかったか? 俺に聞かれたくない事とか、幾らでもあっただろ?」
そう言われなくても、大抵の事知っているだろうと思っているコヅキは、困った様子で隣に立つジークにアイコンタクト。
対してジークも、ある程度の事はヒビキに報告してしまっているので。ふとした瞬間浮かんできた言葉は、リョーイチが言ってた陰口のような話だった。
「そう言えば……。ヒビキさんが痛恨の選択ミスをしたって、リョーイチがLINEで言ってましたけど」
「リョーイチが?」
「なんでも、言ったら雄さんに悪いとかで。結局教えてくれなかったんですけどね」
「確か、ヒビキさんが雄ちゃんを解雇? した後の話だったよね?」
「そうですね。あのお人好しが、ヒビキさんを一杯食わせるとは思わなかったとか」
するとヒビキは、妙に聞き分けが良かった雄の態度に疑問を抱き始めた。当初は、本命の正体がシュバルツだとヒビキに知られた事で、気を遣ってくれたのだと思っていたのだが__。
「なるほどな」
脳内で情報を整理し、リョーイチの言う痛恨の選択ミスを理解したヒビキは顔色を悪くした。雄は、ヒビキがシュバルツを殺す覚悟を一瞬で見抜き。利用される前にヒビキから離れる事を選択したのだ。
ーーヒビキ、見た目に騙されんなよーー
ふとした瞬間に思い出される親友の忠告。
それがもし、彼の経験から言っていることだとしたら……。ヒビキは100%、朱色の鉢巻を靡かせたお人好しな雄だろうと思った。
△▲△▲△▲
最初のコメントを投稿しよう!