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「油断も隙もあったもんじゃないね」
「ムグル、申請は?」
「通ったよ。ついでに弔い費用を含めた危険手当ての増額も考えてくれるってさ」
「有難迷惑な話だな」
この間、二人の心臓を狙って伸びてきた触手は本体へと戻り。白い仮面に黒い人型を模したモノは、本体を影のように延ばして複数の触手を産み出していた。
一方予想外の展開の早さに追い付けないリョーイチとキョウは、まず攻撃を仕掛けてきた相手との間合いに驚いた。
目の良いリョーイチでも、辛うじて黒い人影に白い何かを身に付けてる程度しか分からない事から100メートル以上は離れている事だろう。視力が悪いキョウでは、眼鏡をかけた状態で黒い人型は認識出来ても、化物だと断言し難い物体に見える。
「リョーイチ君とキョウ君は、ラスボスまで出来るだけ弾数温存しといて」
「本命じゃねぇのか?!」
「仲間の弔いだよ」
ムグルの指示から正確に敵を把握しきれていないリョーイチが確認をとると、相手を見据えてあた雄が答え。アストラル・ガンを強く握りしめた次の瞬間には、一気に敵との間合いを詰めに走っていた。
「手出し無用だからね」
状況を読みきれていないリョーイチとキョウに、念のため雄の進路を妨害しに来るであろう触手に備えて銃を構えたムグルが忠告。
今までにない緊張感がリョーイチとキョウの背筋に走るが、目の前に現れた新種と思われる化物は、数弾ムグルの銃撃を触手ごと部分粉砕された後。間合いを詰めて相手の後ろに回り込んだ雄の銃撃1発で仮面を粉砕され、あっという間に消滅してた。
その早さは、接近戦を得意とするジークとタメを張れるどころか。雄の方が早いかもしれないと、リョーイチとキョウは思った。
けど雄は、息吐く間もなく攻撃を受けた。
殺気に気付いた事で、複数の触手が雄の身体を貫く事はなかったものの。追加で現れた個体とは別に、もう一体現れた事で雄の顔色が曇る。ムグルに援護をお願いしたくても、相手がまわり着くように追っかけてくる上に、似た個体が複数の触手を操っていることから目の錯覚を産み出してしまっていた。
「これじゃ撃てない」
「さすがにマズイな」
「ちっ」
命中率の高いムグルとキョウが、相手に標準を合わせようとした銃口を下ろしたところで、リョーイチが舌打ちを打った。
援護してやりたいのは山々だが、相手の攻撃を目で追うのがやっとだったことから、足手まといになってしまうと判断したのだ。
そして、ついに攻撃をかわしつづけた雄の目が錯覚を起こして、避けきれなかった触覚が獲物を貫かんとした瞬間。戦闘に割って入ってきたジークが、素早い一太刀で攻撃を阻止した。
「煩わしい個体を相手にしてますね」
「恩に着るよ」
でも雄を狙う個体は、それだけではなかった。突然背後から落ちてきた影に驚いた雄が振り返ると、本命が獲物を丸のみにするために身体を変形させる途中だった。
「雄ちゃん!」
何時から現場に居合わせたのか。驚愕な表情でコヅキが名を呼んだ直後、持ってた銃器を鈍器代わりに振りかぶったヒビキが、本命の頭を殴り飛ばして事なきを得た。
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