27話/擦れ違う望み

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「て、うちのボス何やってんるんすか?!」  華麗に人助けをしてみせたヒビキだが、同行者のイヌカイは顔面蒼白で拳銃を抜くと、触手を復活させた個体の仮面に数発の銃撃を浴びせながら必死に叫ぶ。 「あんた、対人以外は無能なんだから下がって!!」  これにはさすがに(え? マジで?!)と驚いた雄が体勢を立て直し、拳銃(ハンドガン)ごときでは割れない触手個体に銃口を向ける事で間合いを確保した。  やはり人としての知能がそれなりにあるようで、同胞の仮面を一撃で粉砕したアストラル・ガンを警戒しているようである。  一方ヒビキにぶん殴られた本命の方は、ひび割れた仮面と勢いで捻れた首を修復させ。バットのように銃器を握りしめたヒビキと対峙し、仮面から探るような眼差しを向ける。 「これ以上罪を重ねるな。……」  実際は、シュバルツが本命に憑依したことで。人間を襲い、喰らうことが出来なくなった本命が変異種を産み出すことが出来なくなったのだが__。そんな事、この世界の常識の中で生きるヒビキが知るよしもなく。  また、そんな本命の本能を抑えていられるのも時間の問題であった。 「オ、レヲ……殺、セ……。ヒ、ビキ」  親友に頼みたくはなかった望みを__。  シュバルツは辛うじて言葉にした後、本能的に産みの親を助ける行動に出た変異種2体を八つ裂きにした。  例え姿が変わっても、シュバルツが親友であるヒビキの命を優先にした証だった。 「シュバルツ」  雄は〈それで良いのか?〉と尋ねるため、意識のある彼の名を呼んだが__。  仮面の下から覗く覚悟の眼差しに負けて、何も言えなくなった。  その代わりに雄がアストラル・ガンの銃口を本命に向けると、今日はここまでという意図を汲んだシュバルツは、陰の沼地に沈むようにトプンと姿を消す。 「作戦失敗だね」  雄が何をしようとしてたのか知ってるムグルは、本命を殴り飛ばし、化物となった親友を目の当たりにした事で、悔しさを滲ませるヒビキを横目に言った。  するとそこへ、ヒビキの指示で物影に隠れていたコヅキが不満そうな顔で文句を言う。 「もうっ、ムグルさんの意地悪っ!!」 「ゴヅキちゃんごと僕を出し抜くなんて、良い度胸してますね。二人共」  てっきり出し抜くのは、女性のコヅキだけと思ってたジークも思うところはあったようで……。ここまで上手く出し抜けると思っていなかったリョーイチとキョウは、ジークの黒い微笑みにビクッと身を震わせながら、文句と言う名の小言に付き合う事となり。  ムグルの言う通り、思わぬ邪魔が入った事で作戦失敗となってしまった雄は、次の手を考えなければならなかった。 「雄ちゃん。頼みたい仕事があるんだけど、いいかな?」  問いかけではあるが、ヒビキの声色から断ってはならないと判断した雄は、銃口を下げて「どうぞ」と応えた。  その(いさぎよ)さから、言わなくても何を頼もうとしているのか。雄なら気付いてると思ったヒビキだが__。 「囮になってほしいんだ」  この機会に言っといた方が良いと判断し、前回とは異なる依頼を申し込んだ。      
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